これからあげる言いまわしは、理解できないということを理由にして、静かな自己発揮を妨げる人がよくつかう、狡猾(こうかつ)で卑劣なものである。
このような言い方は、誰かを犠牲にするときによく利用される。
「なぜ、あなたがそういうことをするのか理解できない」
あなたには、自分のやっていることすべてを他人に理解させる責任があり、そうしない限りはあなたは間違っている、というわけである。
「いったいどうして、そんなことができるのか」
話し手は、あなたが進んでやったことに対してカッカしている。
そして、自分の理解できないようなことをしたのは許しがたい、とあなたに思わせようとしているのだ。
「そんなことは聞いたこともない」
ここでは、前のようなやり方に、信じられないという感情が加えられている。
この場合、加害者は、あなたの言動にひどいショックを受けたように装うのだ。
そして、あなたのやったことに対して、すべての人(あるいは「彼ら」)が眉をひそめるだろうから、あなたは間違っている、と言っている。
したがって、あなたは自分が考えるようにすべきだ、とほのめかすのである。
「私がどんなに辛いかわかっているはずだ」
ここでは、あなた以外の人が自分で勝手に気分を悪くしている。
なのに、その気持ちを理解しないからという理由だけで、あなたに悪かったと感じさせようとしている。
「今は〇〇だというのに、そんなことをやろうとするなんて信じられない」
このような言いまわしをつかえば、あなたがやりたいと思っているジョギングや読書、昼寝などをやめさせることができる。
加害者側が計画しているスケジュールに、あなたを従わせるためにつかう戦法だ。
どんなことであれ、あなたが今していることはそれほど悪いことではないはずだ。
なのに、これから何をすべきかを決めるに当たって、その優先順位を加害者側が握ってしまっているのだ。
だからあなたがやりたいようにやると、相手は混乱し、傷つくと言うのである。
これが犠牲のゲームでなくて何であろうか。
また、この言いまわしと同時によくつかわれるのに、「明日まで待てるだろう。今日だけ中止すればいいのだから」というものがある。
あなたにはあなた自身のジョギングのスケジュールがあって、一日たりともさぼりたくないなどということは、もちろん相手には関係ない。
なぜなら加害者は、あなたがこの点について妥協しないという、まさにその理由を理解できないからである。
「あなたは、心で考えていることをちっとも私に言ってくれない」
これは、あなた自身の個人的なことを暴露させようとする試み、プライバシーを守ろうとするあなたの欲求を放棄させようとする作戦なのだ。
もしもこの作戦にひっかかり、あなたの個人的な考えを口に出してしまったなら、相手は、そんなことを考える権利などあなたにはないと主張し、あなたを激しく攻撃することだろう。
「私のためにやってください」
理解できないといくら弁解してもあなたを思い通りに動かせないとき、加害者たちはヘりくだって、今度はこのような手をつかう。
個人的なお願い、とするわけだ。
やってあげれば彼らをよろこばすことになる。
あなたはそう考え、やりたくもないことでも、やってあげようという気になってしまうのだ。
つまり、やりたくないことでもやってくれるようにと、言われているのである。
「あなたは私を傷つけた」
相手はあなたを、申し訳ないという気持ちにさせたいのだ。
そして、彼らと同じような気持ちになるように態度を改めなければならない、と思わせたい。
あなたを思い通り動かすための「もっともらしい理由」として、このように憤慨する人には注意すべきだ。
「謝りなさい」
これは、思ってもみないことを強制的に言わせたり、あるいは追い詰めたりすることで、最終的にあなたの言動を支配してしまおうというやり方である。
この時点で、たとえあなたが自分から謝りたいと思っても、すでにそれもできない状況に追いやられている。
謝れという相手の要求に屈せずには、謝れなくなっているのだ。
しかし、強制されて謝罪しても、誠意を示すことはできない。
だからこの場合の謝罪には何の価値もないのである。
このことを頭に入れ、いつでも指摘できるようにしておきなさい。
以上は現代社会において、「理解できない」と言いわたされることによって犠牲者になる、ごく一般的な例の一部である。
これらの例は、著者の行なった何千というカウンセリングの中から集めたものだ。
これら多くの人々のカウンセリングで、患者たちは、友人や同僚、あるいは近隣者や親戚などといった善意の仮面をつけた人々に虐げられ、これらの加害者から非難された話をしてくれた。
ある程度、生きていると「心ない言葉」や「信じられない言葉」を浴びせられることがあります。共通して言えたのが、「私のマウントを取りたい」のようでした。勝手に取ってもらっていいのですが、結果的に私の「勝ち」になってしまいます・・・
↓ 参考書籍
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