動作や身振りは誠実さや共感、相手への理解を伝えてくれる。
だが、そればかりではない。
アメリカの夫婦セラビスト、ジョン・ゴットマンと共同研究者のロバート・レベンソンは、身振りが夫婦関係に与える影響について詳しく研究した。
その結果、驚くべきことがわかった。
なんと、離婚する夫婦には、本人たちもそうと気づかないうちから、共通する行動パターンが見られたのだ。
なんと、ゴットマンいわく、夫婦げんかの会話を見れば、その夫婦が4~6年後に離婚するかどうかを90バーセントの確率で言い当てられるというのだ!
判断の基準となるのは、ある特定のシグナルだ。
これらのシグナルは聖書で来るべき終末を告げるとされる騎士の名から「ヨハネの黙示録の騎士」と呼ばれている。
夫婦げんかで絶対に避けたい、結婚生活に終末をもたらす5つのシグナルは、次の通りだ。
繰り返し批判する。
「あなたはいつも……じゃない」「君は一度だって……しない」など。
もちろん不満を伝えることは大切だ。
ときには批判も必要だろう。
だが、相手の人間性を繰り返し否定するような批判は、破滅のシグナルとなってしまう。
偏った視点での決めつけと感情的なもの言いが合わされば、二人の関係はそう長くは続かないだろう。
相手のせいにする。
次は、けんかで相手に責任をなすりつけようとする態度だ。
「君はそう言うけど、僕のせいじゃない!」とか「私ばかり責めるけど、あなたには責任がないっていうの?」といった言葉は、二人の関係をぎくしゃくさせてしまう。
壁をつくり黙り込む。
相手がふくれっ面をして、唇をかんで黙り込んだら、事態はかなり深刻だ。
腕を組み、目を合わせようとしない場合はさらにまずい。
こうなると相手は「別に・・・」とか「もういいよ・・・」といった言葉で会話をボイコットしてくる。
軽蔑のしぐさをする。
皮肉げに笑う、頬を膨らませる、口の片方だけを上げる、鼻にしわを寄せる、目をぐるりと回してみせる、手で払いのけるようなしぐさをする、など。
ゴットマンによれば、これはもっとも危険なシグナルである。
自分の立場を守ることだけ考える。
お互いが張り合ってスペースを広くとり、大げさな身振りを多用し、「やってみたら?どうなるか見ものだな」といった言葉を口にする。
ただし、これらはすでに事実上終わってしまった二人に見られる行動だ。
手段を選ばず自分の立場を守ろうとしているのである。
一例として、次のような夫婦げんかを見てみよう。
ある夫婦が高音質サラウンドスピーカーを購入した。
夫は聴覚タイプなので、音の響きを何より重視する。
スピーカーの配置によってリビングの見た目が悪くなっても、しかたがないと考えている。
一方、妻は視覚タイプなので、音の響きよりもリビングが美しく整っているほうが重要だ。
いかにも、けんかが起こりそうな状況である。
夫が言った。
「スピーカーはこっちの壁に取りつけようよ。この位置なら最高のサウンドを楽しめる」妻は目を細め、眉を寄せて反対する。
「でも、それじゃあ見た目が最悪だわ。あなたってセンスがないのね」。
これは相手の人格を直接攻撃する批判だ。
この時点で、夫婦の対話はもはや客観的な話し合いではなくなる。
夫はすかさず防衛に入る。
夫婦げんかの第ニステージだ。
「センスがないって、どういう意味だよ?だったら、どこでも君の好きなところに置けばいい!」
夫のこの反応は、妻からの批判に黙っていられず反論する、反射的なものだ。
ただ問題なのは、妻に「自分の意見を無視された」と思わせてしまう点である。
なぜならこの反論は「見た目が悪いのは嫌だ」という妻の意見にまった<向き合っていないからだ。
こうなると妻はたいてい壁をつくつてしまう。
腕を組んで唇をかみ、こんなふうに言うのだ。
「別にいいわよ、私はもとからスピーカーなんてどうでもいいもの」
ここで夫が軽蔑のサインを見せると、状況はさらに悪化する。
たとえば上唇をわずかに上げて、目をぐるりと回して「まったく、君はいつもヘソを曲げてばかりだ」などと言った日には、火に袖を注ぐことになる。
こうして、けんかの本題はスピーカーからお互いの人格へとあっという間にすり変わってしまう。
もとをただせば、単に使っている五感が違うという、ただそれだけのことなのに。
破滅のシグナルがあまりに多く見られると、そのカップルには「残念ながらそう長くはない」という診断が下されることになる。
ちなみにゴットマンは診断のための具体的な数字として5:1という割合を挙げている。
一度くらい軽蔑的に目をぐるりと回してみせても、その前ほほえに5回微笑んだり優しくうなずいていればまだセーフだ。
しかし軽蔑のシグナル5回に対して微笑み1回では、二人の未来はバラ色とは言いがたい。
それからもう一つ、破滅のシグナルに加えて、特に男性のみなさんに気をつけてもらいたい危険シグナルがある。
あなたの奥様が、今までなら激怒していたようなことに対して急にまったく怒らなくなったら、それはとても危険な兆候だ。
↓ 参考書籍
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