インドの社会心理学者で、非言語コミュニケーションについて研究しているナリニ・アンバディは、こんな実験を行っている。
学生に13人の教授を撮影した5分間のビデオを見てもらい、その教授がどんな人かを予想してもらう。
ビデオに音は入っていないので、学生は教授たちの非言語サインだけを頼りに判断を下すことになる。
結果は驚くべきものだった。
学生たちはほんの短時間ビデオを見ただけで(たとえば、ある場合にはたった30秒で)、それぞれの教授がどんな人物かを見きわめていたのだ。
学生たちは、ときには一目見ただけで、あるいは堅苦しい姿勢や、ぴくりと目もとが動いたといった手がかりから、その教授の誠実さ、支配性、熱意、ユーモアがあるかどうかなどをすばやく判断していた。
人間の表情や身振りは無意識なだけに、本当の姿を教えてくれる。
この実験はそれを証明してくれた。
【自分のしぐさは、人にどんな印象を与えているのか?】
私たちは言葉以外の「非言語的な」行動から、他人のことをあれこれ判断する。
だが、自分の身体言語が相手にどんな印象を与えているかについては、はたしてきちんと把握できているだろうか?
さらに難しいポイントがある。
自分の身体言語が自分自身の考え方や行動にいかに影響を及ぼすかを、あなたは意識できているだろうか?
それはすべて、自分の身体をどうコントロールするかにかかっている(逆もしかり。身体と思考はけっして一方通行ではなく、つねに双方向だからだ)。
このことから一つの法則が導き出せる。
その法則とは・・・「すべての力は自分の内面から生じる」というものだ。
要するにこういうことだ。
私たちの幸福や、身の回りの世界に対する認識は、すべて自分の思考から生まれる。
そしてそれが身体にも実際に形となって表れるのである(ここでもまた、逆もしかりだ)。
もう一つ、「境界など存在しない」という法則もある。
これはつまり、「身体と思考は一つ」ということだ。
両者は互いに影響を及ぼし合っている。
私たちは身体言語によって、他人のみならず自分自身にも何らかのシグナルを送っている。
同じように、思考と感情の間にも境界はない。
僕たちはつい、感情にまかせて物事を考えてしまいがちだ。
だが、感情を思考に従わせることだってできるのだ。
感情に従うことが必ずそれに、自分や相手の身体に注目することがいかに大切かということも。
【自分の思考を自由自在に変える方法】
ところで、あなたの「思考」を左右するものとは、具体的には何だろう?
答えは、あなた自身だ!
そして、その「思考」が、あなたの感情、ものの見方、さらには行動を左右する。
ある状況に陥ったとき、状況そのものを変えるのは難しいだろう。
でも、その状況をどう判断するか、すなわちどう考えるかは、あなた次第だ。
ということは、そう、すべてはあなたの思うがままなのだ!
あなたの人生は、あなたの思考によって決まる。
つまり、こういうことだ。
自分の体験を振り返り、「それまでの考えが一瞬で変わったとき」のことを思い出してみよう。
たとえば、こうだ。
あなたは街角を歩いている。
これから友人と楽しいディナーの予定で、心は浮き立ち、頭はそのことでいっぱいだ。
すると突然、ひざの後ろにガツンと何かがぶつかってきた。
一瞬のうちに、あなたはカッとして振り返る。
「誰だよ!気をつけろ!」そう言いたい気持ちをぐっとこらえて見ると、視線の先では小さな子どもが道に倒れている。
どうやらその子が転んだ拍子にぶつかってしまったようだ。
そうとわかったとたんに、怒りは消えていく・・・。
思考とそこから生み出される感情は、こんなにもくるくると変わるのだ。
今の例では、外側からの情報をきっかけに思考と感情が変化した。
さて、ここからがおもしろいところである。
これを内側から変えるにはどうすればいいだろう?
その一つの方法が、姿勢を変えることだ。
一度ぜひ試していただきたいのだが、肩と首すじがほぐれた状態で不快感を覚えることは難しい。
眉をぐっとしかめながら上機嫌をキープしようとしても、うまくいかないはずだ。
僕たちの身体が発するサインは、先ほどもいった通り、けっして一方通行ではない。
身体の状態は思考に必ず影響を与える。
そこには「境界など存在しない」のだ。
↓ 参考書籍
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