【Googleが最重要視する特性】 「知的謙遜」とは?

心理・思考・時間

「知るを知るとなし、知らざるを知らずとなす、これ知るなり」論語にこんな言葉があります。

孔子が門弟の子路に語った言葉で、「自分が持つ知識や情報の範囲を把握し、逆に自分が何を知らないかを正しく理解する。これが、ものごとを本当に『知る』ことだ」という意味です。

実に含蓄に富む言葉ですが、孔子の考え方の正しさは、近年科学の世界でも裏付けられ始めています。

「知らざるを知らずとなす」態度を身につけると、私たちの判断力は大きく上がり、結果として高い客観性が育まれる事実が明らかになってきたのです。

このような態度を、心理学の世界では「知的謙遜」と呼びます。

文字どおり、自分の知識の限界をちゃんと把握できる状態のことで、ソクラテスの「無知の知」にも近い考え方と言えます。

Googleのような先端企業はすでに「知的謙遜」の重要性を深く認識しており、同社で人事を担当したラズロ・ボック氏は次のようにコメントしています。


「Googleでは、社員を採用する際に謙虚さと責任感を重視します。あらゆる問題を解決しようと試みるオーナーシップを持ちつつも、自分の立場に固執せずに他人のアイデアを受け入れる謙虚さを求めるのです。仕事の最終目標は、問題解決のためにチームとして働<こと。そのためには、チームのために貢献しながらも、自我を引っ込める態度が大事になり他者の貢献を正しく認めるには、ただの謙虚さではなく『知的謙遜』さが欠かせません。私たちはものごとを深く学ぶことはできないからです。優秀な人ほど失敗を経験したケースが少なく、失敗から学ぶ方法を学べていないことはよくあります」

知的な謙虚さがないと自分が犯した失敗から改善点を学ぶことができず、いつまで経っても客観力が育たない、というわけです。

実際のところ、有名なビジネススクールを首席で卒業したような学生たちが、仕事の現場で持ち前の能力を発揮できない事態はよく見られます。

このような現象が起きるのは、優秀な人たちほど知的な謙虚さがないことが多く、そのせいで「根本的な帰属の誤り」と呼ばれる心理的な罠に囚われやすくなるからです。

「根本的な帰属の誤り」とは、良いことが起きたのは自分のおかげで、悪いことが起きたのは他人のせいだと考えてしまう心理のこと。

人間は誰しも自分のことをかわいく思う生き物なので、どんなに知的なレベルが高い人でも、ミスや失敗を他人に押しつけてしまう傾向があるのです。

再び、ラズロ・ボック氏の言葉を見てみましょう。

「知的レベルが高い人たちは、根本的な帰属の誤りを犯しやすい。何か良いことが起きた場合は、彼らは自分が天才だったからだと考える。逆に何か悪いことが起きた場合には、彼らは他の誰かが愚かだったか、または自分が十分なリソースを得られなかったのが原因だと考えてしまう」

確かに、このような考え方を続けていては成長は見込めないでしょう。

常に「失敗は他人のせいだ」と考えていては客観力が育つはずもなく、正しい判断をすることができないからです。

【知的謙遜でテータやファクトの精査が上達する】


もちろん最近は「知的謙遜」の研究も進み、その高い効能が確認されています。

たとえば、2017年にデューク大学が行った実験を見てみましょう。

研究チームは、まず被験者に「どれぐらい自分の知識の限界を知っていますか?」のような質間を投げかけ、全員の知的謙遜レベルを測定。

そのうえで「難民はすべて追い出すべきだ」のような極論を主張するエッセイや、「デタルフロスはどこまで役に立つか?」といった健康に関するデータを読むように指示し、それぞれの内容がどれだけ客観的な事実に基たづいているかを判定させました。

ここでチームは、「知的謙遜」の内容を次のように定義しています。

「知的謙遜が強い人は固い信念を持っているが、そのいっぽうで自分の間違いやすさに気づいており、問題の大きさにかかわらず何を誤ったかを知ろうとする意志を持っている。日常的な言葉で言えば、『柔軟な心』に近いだろう」

自分がどれだけミスを犯しやすい人間なのかを受け入れ、その認識に従って適当な行動を取れるかどうかが「知的謙遜」の大事なポイントです。

さて、この研究では、知的謙遜のレベルが高い人ほど以下の傾向が認められました。

・忍耐力、好奇心、中立性が高い

・自分と意見か異なる相手でも、簡単に批判をしない

・データやファクトを精在するのがうまい

いずれも客観的にものごとを判断するためには欠かせない能力ばかりでしょう。

自分の限界を知っている分だけ「根本的な帰属の誤り」にまどわされにくく、異なる意見に対しても寛容な態度を崩さず、ちゃんと事実に基づいた判断をくだせるわけです。

この結果について、研究チームはこうコメントしています。

「間違いを恐れずにしっかりと認める態度には、それ自体に立派な価値がある。そして、この態度は意識して伸ばすことができると考えられる。すべての人が知的謙遜を少しだけ伸ばしていければ、お互いへのフラストレーションは減り、つまらないケンカもなくなるだろう」

要するに、「知的謙遜」は客観的な判断力を高めるだけでなく、日々のフラストレーションを下げる働きも持ちます。Googleが重要視するのも当然かもしれません。

佐藤さん
佐藤さん

本書には、自信の「知的謙遜」はどれくらいか?計測する問答もございますので、ご購入してみるのもアリだと思います。

↓ 参考書籍

コメント

タイトルとURLをコピーしました