【食べないことが投資になるもの】
健康を維持し、体調を常にピークにするためには、「何を選ぶか」と同じぐらい「何を避けるか」は重要です。
どんなにいいものを食べていても、健康被害をもたらすものを日常的に摂取していては、台無しになってしまうからです。
現代社会においては、避けるべきものに対して知識を持ち、自衛をしないと無意識のうちに大量の「避けるべきもの」を取り込んでしまうことになります。
自衛のための「食べない投資」ができるように、必要な知識をここではお伝えしていきます。
【現代人は糖質のとり過ぎ】
糖質は効率よく細胞のエネルギーを生みだす貴重な栄養素です。
しかし、現代社会はあまりにも利便性が高まり、いつでもとこでも簡単に糖質を食べることができるようになってしまいました。
その結果、ほとんどの現代人が糖質過剰摂取の状態に陥っています。
朝にパン、朝にパスタを食べ、午後にいただきもののお菓子を楽しむ。
健康のために野菜ジュースを飲み、夜は会食でワインを飲みながらのフルコース・・・・といった高糖質な食生活は、ビジネスパーソンには珍しくないことでしょう。
ハイパフォーマンスを目指すには、脳細胞のエネルギー源となる糖質摂取も必要ですが、糖質摂取量が多過ぎると、かえってパフォーマンスを落とすリスクもあります。
リスクのーつに、糖質過剰摂取による高血糖状態が長く続くと糖質とタンペク質が化合して生じる「糖化タンパク質」が増えてしまうということがあります。
糖化タンパク質の中で、正常の状態に戻れなくなってしまったものが「AGEs(終末糖化タンパク質)」です。
これは、さまざまな細胞障害を引き起こすことが知られています。
欧米人と比べて、日本人は血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌量が少ないと言われており、その結果、同じ量の糖質を食べても高血糖になりやすい人が多くいる可能性があります。
さらに高血糖状態が続けば、避けたい病気の一つである糖尿病になるリスクも増えてしまいます。
リスクの二つ目は、糖質、中でも精製された穀類や砂糖類などのとり過ぎによって、血糖値の乱高下を引き起こし、体調不良の原因となることです。
急激に血糖値が上昇すると、血糖値を下げるために大量のインスリンが分泌されます。
このため血糖値は下がり始めるのですが、インスリンの影響は血糖値が下がった後まで残るため、数時間後には血糖値が必要以上に下がってしまう、という現象がおきます。
この状態を「低血糖状態」と呼びますが、集中力や思考力の低下や、体のだるさなど、さまざまな症状を伴うことが知られています。
高血糖や低血糖がとんな悪影響を与えるかについて、次にまとめます。
①糖尿病
血液中のブドウ糖濃度である血糖値が、人の20~30%が罹患するといわれています。
発生の原因はインスリンの分泌不足やその働きの異常が生じることにあります。
糖尿病には二つの型があります。
「1型」は膵臓でインスリンを産生できなくなることによっておきるもの、「2型」は栄養の偏り、過食、運動不足などの生活習慣が加わることで、インスリンの分泌不全や働きの低下が起こり発症します。
働き世代に発症する確率が高いのが、この2型です。
糖尿病の怖いところは、その合併症にあります。
糖尿病ではAGEsが増えることによって、抹消血管がダメージを受けてしまいます。
その結果、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、末梢神経障害といった深刻な合併症が起きてしまいます。
さらに近年の研究で、糖尿病ではアルッハイマー型認知症の発症率が高くなるということも明らかにされてきました。
すなわち糖尿病になると脳の機能にも好ましくない影響があるということです。
②動脈硬化
高血糖の状態が続くと、当然ですが血中インスリン濃度が常に高い状態が生まれます。
インスリンは老化を進める最悪のホルモンとも言われ、アンチェイジングドックでは、空腹時インスリン濃度を下げることが重要な目標の一つに挙げられます。
高血糖、高インスリン血症が持続すると、動脈の変性が起こりやすくなり、その結果動脈硬化が進行し、高血圧やさまざまな心臓疾患の原因となります。
動脈硬化が起こったところで血栓が生まれると、その先への血流障害が起きるため細胞が死んでしいます。
これが「梗塞」であり、心筋梗塞や脳梗塞が一般的に知られています。
③肥満
インスリンは、肥満にも深く関係しています。
高血糖が持続すると、インスリンは糖を脂肪細胞に送り込み血糖値を下げようとします。
その結果、脂肪細胞の中でも特に内臓脂肪が増える結果となります。
寝る前に糖質を大量に摂取する場合には、この傾向が顕著になるようです。
内臓脂肪が増えると、今度はこの脂肪細胞からさまざまな物質が放出され、高血圧やさらなる肥満の原因を作ることもわかってきました。
このように、糖質の過剰摂取は悪循環の歯車を回す原因となってしまいます。
④脳機能への影響
血糖値が急上昇すると、すい臓が大量のインスリンを分泌し、数時間後には血粧値が急降下します。
その軌道は、まさにジェットコースターです。
大量のインスリンが分泌されると、通常の空腹時(80~100mg/dl)よりも血糖値が下がつてしまう。
70mg/dlを下回ると、眠気に襲われたり体がだる<なったり、何だか落ち着かずに集中が途切れて仕事が手につかないだけでなく、イライラしてしまったりする精神症状を呈することもあります。
このように、血糖値の変動はさまざまな弊害を引き起こすことから、何かを口にするときは糖質のとり過ぎにならないかどうか、気を付けることが重要です。
では、糖質はどの程度摂取したら良いのでしょうか。
その判断をするための、一つの指標となる研究論文があります。
ハーバード大学が2018年に発表した、炭水化物摂取量と死亡率との関連を調べた研究論文を見てみましょう。
この研究では、極端なカロリー摂取をしていない1万5428人の成人男女を対象に、平均で25年間の間、食事の内容と生命予後との関係を調べました。
この結果、炭水化物からの総エネルギー摂取が50~55%の群が、最も死亡リスクが低いことが判明したのです。
一方で、最も死亡リスクが高かったのが、炭水化物摂取70%の群と、40%の群でした。
つまり、炭水化物摂取量が多過ぎても、少な過ぎても、死亡リスクは高くなるということです。
これを踏まえると、大切なのは過剰な糖質制限をするのではなく、個々の運動量や体質によって糖質の必要量はどれぐらいかを経験や検査から知っておく必要があることがわかります。
私は、クライアントに対しては、1日の糖質摂取量を200~250g以内にすることを勧めています。
減量目的の場合であれば、1日の糖質摂取量を150g以内にする「マイルド糖質制限」がよいでしょう。
ハーバード大学の研究で最も死亡リスクが低かった「炭水化物50~55%」は、1日の摂取カロリーを2000カロリーとした場合、炭水化物から食物繊維を除いた糖質量でいうと200~250gです。
ただし、デスクワーク中心の仕事だったり、毎日運動をしていない場合には、少々多い量かと思いますので、150~200g以内を目安にすることをお勧めします。
一般の方は、糖質を1日あたり200~300gとっていると言われているので、150~200gは実現しやすく無理のない数字かと思います。
茶碗に普通に盛った白米の糖質は50g前後なので、わかりやすいのは朝と昼に茶碗1杯ご飯を食べて、夜は主食を控えておかずのみにするという方法。
おかずにも糖質は入ってくるので、これで大体150gに近い数字になるという算段です。
どうしても空腹を感じてしまったときの間食は糖質以外のものにするか、糖質をとった分、ご飯の量を調整することで対応します。
この「1日の糖質摂取150g」を13名の方に1カ月間、実践してもらったところ、平均3kgの減量に成功しました。
ダイエット前後の血液データをみると、脂肪が分解されることで発生する「ケトン体」の濃度が、ダイエット前と比べると平均で7倍に増えていました。
CTスキャンで調べたところ、皮下脂肪と内臓脂肪の両方が減少していましたが、特に内臓脂肪が大幅に減っていたことがわかりました。
糖質を適切に制限することで、体内の脂肪がどんどん分解される体質に変化したということです。
つまり、血糖値の乱高下を避けるためには、糖質の質と量を適正にすることが重要である、ということです。
食べていい糖質と避けるべき糖質があり、さらに食べ方も影響してきますので自身の「食生活」をしっかり理解して改善しなければいけないところは、しっかり改善していきましょう。
【食べない快憾の効果】
成人病とか生活習慣病といわれる現代病は、エネルギーの過剰摂取が主な要因といっても過言ではありません。
現代人は総じてカロリーを摂りすぎる一方、ビタミンやミネラルなどの栄養素が慢性的に不足しています。
まさに、飽食時代の栄養不足というパラドックスです。
私(著者)は、「高栄養・低カロリー」が理想と考えています。
そこでおすすめしたいのが一日二食主義です。
具体的にいうと、朝食を摂らない主義です。
食後8時間を過ぎる頃、私たちは空腹感を覚えます。
この空腹感により腸内にモチリンというホルモン物質が分泌され、腸の嬬動運動が促進されて排泄がすすみ、整腸されます。
朝食を抜くと、前日の夕食から当日の昼食まで約17時間の絶食状態が続きます
そのうち約10時間は空腹の状態となりますが、少し慣れると、ほとんど空腹感を感じなくなります。
なぜかというと、体に蓄えられている、いわゆる体脂肪が燃焼しはじめると、ケトン体という化学物質が生じ、これが空腹感を抑えるからです。
朝食を摂らないと元気が出ないというのは、単なる自己暗示と考えてよいでしょう。
朝食抜きのメリットは、便秘知らずのスッキリとした腸、余分な体脂肪の燃焼、飽食による有害な代謝産物(過酸化脂質、活性酸素など)を抑制するなど、さまざまです。
そしてさらに、週に1度は断食をする「間欠断食」もすすめています。
断食といっても特別なことではなく、週に24時間食事および間食をしないということで、お茶やジュースは普通に摂って構いません。
朝食抜きと間欠断食でみるみる体調がよくなることに気づくはずです。
肥満の方は、瞬く間に体重が減って適性体重になります。
免疫力の向上と延命効果も期待できます。
カロリー摂取量を抑えると同時に、ビタミン、ミネラル、そして、微量栄養素である植物性化学物質(ファイトケミカルス、ポリフェノール、フラボノイドなど)を十分とることを忘れてはなりません。
野菜類を多く食べるとともに、良質のマルチビタミン・サプリメントを栄養補助食品として毎日摂取することが最良の方法です。
↓ 参考書籍
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