【複雑な変化に備えて適応力を高めておく】
「レジエンス(再起力)」というと、つい、大きな困難から立ち直る力を想像します。
ですが、経営理論の分野ではことところ、もう少し含みのある定義が提唱されるようになってきています。
レジリエンスとは、「複雑な変化への適応能力」だということです。
となると今日の世界では、レジリエンスがほぼ恒常的に必要になります。
問題は切れ目なく怒涛のごとく押し寄せ、組織において一貫しているのは変化だけという状況で、リーダーは継続的なスキルとして、レジリエンスを培う必要があります。
手痛い失敗や大きな変化といった、「決定的瞬間」に限ったことではないのです。
レジリエンスの高いリーダーたちは自分をよく知っていることが明らかになっています。
自分の強みが何であり、それが何によって引き出されるか、何を強く信じているかをよく自覚しているのです。
このように自分をより深く知ることで、いかにレジリエンスを強くできるかを、ご紹介していきます。
【自分のスキルを正当に評価する】
今後の先例となるような大きな変化に直面すると、リーダーは身がすくむほど自信が揺らぎます。
著者のクライアントの一人で、会社の生産フットプリントを改善する一環として、工場の閉鎖を発表する必要があったが、工場側がどう反応するかを考えるうちにパニック状態になり、数週間もの間、発表できずにいまいた。
彼の不安の中心にあったのは、「この決定を説明するにふさわしい信用性が、自分にはない。数十年にわたって、互いに誠実に付き合ってきた同僚たちから恨みを買うことに、耐えるスキルもない」という強迫観念でした。
だが実際は、まさにこの長年の誠実な付き合いこそが、決定を発表するにふさわしい信用性を支えているのであり、また、彼ならではの行き届いた計画立案をもってすれば、最終的にはネガティブな反応を最小限に抑えられる見通しもついていました。
変化を不安視するあまり、自分自身の強みを客観的に見る能力が鈍っていたのです。
レジリエンスのあるリーダーたちは、自分のスキルと経験を武器にして、目の前の困難に立ち向かう準備がどこまでできているか、また、合理的に欠けていると考えられるところはどこか、正当に評価します。
自分に欠けている部分は他者にスキルで補強し、できる限りの準備をする。
何より重要なのは、自分の不足部分を率直に認めて、至らなさを隠そうとしていると見られないよう心がけることです。
【八つ当たりはできるだけしない】
激しい変化の中で猛烈なストレスにさらされたり、厳しい市場の逆風に直面したりすれば、リーダーの堪忍袋の緒も切れやすくなります。
自分がどんな影響にさらされているかを自覚していないリーダーは、たまたま目の前にいる人に、自分のストレスをぶつけがちです。
事務アシスタントや状況を知らない家族、あるいは役にたとうとしている直属の部下が、的外れなフラストレーションのはけ口になることがよくあります。
大きな変化が起こっている時とは、規制上の要件変更や市場の減速といった、誰にもコントロールできない状況がいら立ちの元になりやすいです。
逆境に直面して短気になる傾向を抑えられないリーダーは、組織からレジリエンスを奪ってしまします。
自分を知り抜いているリーダーは、他人を傷つけるような見当違いの反応を食い止めることができる。
代わりに、自分でコントロールできることに注力するのです。
【非現実的な期待を順送りせず、押し戻す】
大きな変化がよくもたらす残念な副作用のひとつは、非現実的な目標設定です。
たいていの場合、そのような期待は上層部から下りてきます。
自分をよく知らないリーダーは、こうした非現実的な期待を、そのまま部下に順送りにします。
そこに、自分の被害者意識からくる怒りもにじませる。
著者はこれまで、多くのリーダーが変革を発表する際、次のように言うのを目にしたそうです。
「不公平だと承知していますし、失敗するよう仕組まれているようにも感じますが、受け入れざるをえない目標をお伝えします」
これでは、変化に着手する前に組織にあったかもしれないレジリエンスが、きれいになくなってしまいます。
自己認識に優れたリーダーは、相手が上司でも顧客でも、誰であろうと、無理な期待を押し戻すことを恐れず、また目標やスケジュールが道理にかなっていない場合は、恐れず再交渉します。
なぜ期待が非現実的であるのか、調整しなければどのようなリスクが課されることになるのかについて、明白な論拠と、証拠になるデータを使って、論理的に自分の言い分を述べた後、組織が成功するチャンスが高まる現実的な代替案を提示する。
それはもちろん、こうした非現実的な期待を抱いた経営上層部が、大きな挫折に直面する前にその見通しを修正できるようにするためです。
いま起きようとしている変化や挑戦は、実際に乗り越えられそうだという自信が持てるとき、リーダー自身と、そのチームのレジリエンスは強くなります。
【アンビバレンスに陥ったときは、原点に立ち返る】
長引く逆境や継続的変化は、最も粘り強いリーダーからも、やる気を奪いがちだ。
多くのリーダーは無意識のうちに、機械的に対処するだけでの「自動操縦」モードに陥ります。
その結果、逆境を克服したり、変化をくぐり抜けて成功を手に入れたりすることについて、複雑な感情を抱くようになります。
そのアンビバレンスが周囲から希望を奪い、努力を断念させることになります。
著者のクライアントの女性は、辞表を出す寸前だった。
彼女は大手製薬会社のR&D部長で、急激に加速する製品開発のサイクルに直面しており、彼女の面前には、治療分野のリーダーたちの縄張り意識が強いことで知られていて、企業文化が立ちはだかっていました。
そして、部門間の競争から成功の共有意識へと軸足を移した文化を構築しようと2年間奮闘したあげく、彼女はまさに断念しようとしていた。
だが「患者の人生を変えられるような優れた医薬品を届けたい」という深い情熱によって、彼女は改革疲れを克服しました。
また、この情熱が銀器を奪い起こすビジョンになり、度量の狭いリーダーたちに、「私が勝つために、あなたには負けてもらう」というメンタリティを押しのけさせる結果に繋がりました。
自分自身のやる気が弱まっていることを自覚しているリーダーは、いま一度原点に立ち返り、前に進むための努力を倍増させ、さらには周囲の人を鼓舞して同じことをする気にさせましょう。
組織生活における逆境は、時には大きな変化の結果であり、また時にその誘因だが、いずれにせよ現代の生活様式の一つです。
この新しい標準に耐えるために、リーダーはより高いレベルのレジリエンスを常に蓄えておく必要があります。
自分をよく知るリーダーは、自分にどのようなスキルがあって何が欠けているか、自分がどのようなフラストレーションを抱えているか、そして、自分にとって核となる原則は何かを明確に把握しています。
そのようなリーダーは、逆境と変化をくぐり抜けるのに必要なレジリエンスの蓄えを維持して、成功する可能性が高いです。
↓ 参考書籍
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