海外の研究で「自然との触れ合いはどれだけ体にいいか?」を調べるために、過去のデータかをまとめて大きな答えを出しています。
その結論をひとことで言えば、「自然との触れ合いにより、確実に人体の副交感神経は活性化する」というものでした。
副交感神経は気持ちが穏やかなときに働きだす自律神経で、日中にたまった疲れやダメージを回復させる働きを持っています。
つまり、自然は人体の疲労を回復させる効果があるのです。
自然がここまで効果を持つのは、「人類の感情システム」に影響を与えているからです。
「感情システム」は人間の心の働きを3種類に分類した考え方で、次のパーツから構成されます。
【興奮】
「喜び」や「快楽」といったポジティブな感情をつくり、獲物や食事を探すためのモチベーションを生み出すシステム。おもに「ドーパミン」で制御されています。
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【満足】
「安らぎ」や「親切心」といったポジティブな感情をつくり、同じ種属とのコミュニケーションに役立つシステム。「オキシトシン」などで制御されています。
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【脅威】
「不安」や「警戒」といったネガティブな感情をつくり、外敵や危険から身を守るためのシステム。「アドレナリン」や「コルチゾール」などで制御されています。
私たちが最高のパフォーマンスを発揮するためには、3つのシステムがバランスよく機能していないといけません。
快楽ばかりを追う人生は退廃に至り、安らぎだけの毎日には前進はなく、不安ばかりの暮らしは日々をよどませます。
それぞれがしっかり嚙み合ってこそ、人間はうまく機能するのです。
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「自然」の環境は3つの感情システムをバランスよく刺激します。
季節のうつろいや草木の変化がほどよい興奮を生み、緑に守られる安心感が心地よい安らぎを生み、森や川に潜む未知の脅威がときに警戒を生みます。
自然のなかにいれば、特定のシステムが暴走することがありません。
ところが都市暮らしでは、おもに「興奮」と「脅威」のシステムだけが活性化しやすくなります。
その極端な例といえば、「古代ローマ帝国」でしょう。
当時のローマは、イタリア半島の属州から莫大な富が本国内に流れ込んでいたため、ローマの市民には食料と娯楽がただで提供されていました。
世界史にいう「パンとサーカスの都」です。
快楽の追及はエスカレートし続け、やがてローマ人たちは、食べたものをいったん吐き出して後、胃袋が空腹になった後、また食事を行うようになりました。
一方で、ローマの暮らしは脅威にも満ちていました。人口が密集したせいで伝染病に弱くなり、町中に腸チフスやマラニアが蔓延。
蚊が多い7~8月には大量の遺体が路上にあふれ、当時のローマでは夏を「死の季節」と呼ぶほどでした。さらに、この時代には定期的な奴隷の反乱や北方のゲルマン人による侵攻が頻発しており、ローマ市民といえども安定した暮らしを謳歌できていたわけではありません。
まさに古代ローマは「興奮」と「脅威」の振れ幅が大きかった時代といえます。
ここまでではないですが、現代の都市部も「興奮」と「脅威」のどちらかにふれやすい性質を持っています。
巨大なショッピングモールやカラオケなどの娯楽施設がささやかな興奮を提供しつつも、仕事のストレスや経済的な問題により、いつも脅威の感覚がかきたてられ、そのくせ濃密なコミュニケーションが減ったせいで、安らぎの感覚は低下傾向にあります。
ポジティブな感情が多すぎても、ネガティブな感情が少なすぎても、私たちの体はうまく機能しません。
そのためには、できるだけ自然に触れ合いを取り戻し、失われつつある「感情のシステム」のバランスを正していくべきでしょう。
以前、私も都市部で仕事をしていましたが、今となって考えると定期的に「海」に行ったり「紅葉」を見に行ったりとしていました。その時は、何気なく「そうしたい」と思って行動していましたが、こうした理由で私自身が欲していたんだな、と思います。
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