自然を失い、友人を失った人類の末路

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現代の環境と遺伝のミスマッチには、いろいろなものが考えられます。過剰な人口密度や大気汚染(多すぎる)、微生物との触れ合いや濃密な対人関係の減少(少なすぎる)、近代的なビルやスマホなどの電子機器(新しすぎる)・・・。

いずれも現代人の不調につながる重要なポイントではありますが、そのすべてに対策を取るのは現実的ではない為、現代人への影響が大きい「自然」「友人」に絞ります。

現代と古代とでは大きく違うことは間違いありません。

農耕が始まってから、人類は山を切り開いて森林を削り、土壌の性質を大きく変えてきました。土地の浸食は数百年にわたって続き、かつての農耕地からは土壌が失われて緑地帯も減少。

北アフリカなどローマ時代に農耕が盛んだった場所は、現在では広大な砂漠地帯と化しています。

18世紀に産業革命が始まると、かつては総人口の7割を占めた田舎暮らしが3割まで減り、逆に人口の7割が都市で暮らし始めます。

ここで人類は、数百万年の歴史で初めて自然の景観から切り離された存在になったのです。緑が豊かな「環境」に適応してきた人類にとっては、あまりにも異例の事態です。

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「友人」にも同じようなことが言えます。

狩猟採集民の暮らしは濃密そのものでした。共同体のなかに「見知らぬ人」などはひとりも存在せず、全員が知り合いか友人といった状態です。

多くの部族には「他人より富を蓄えてはいけない」という掟があるため、個人間の格差や差別などもほぼゼロ。

コンゴとフィリピンの狩猟採集民を調査した研究によれば、男女の格差も確認されませんでした。

彼らの労働時間は1週間に12~19時間ほどで、毎日数時間ほど食料を探しをしたら、あとは家族や友人たちと踊ったりと、親密なコミュニケーションを日暮れまで続けています。

孤独の問題やコミュニケーション障害が起きるケースは非常にまれです。

その一方で、現代人は孤独をこじらせ続けており、特にここ10数年は日本での問題が激増しています。

ユニセフの調査では、「孤独を感じる」と答えた15歳以下の子供の数は29.8%にものばぼりました。先進国では最高の数字です。「友人」の問題もまた、長い人類史上で類のない異常事態と見るべきでしょう。

【孤独だった人に友人ができると寿命が延びる】

「友人を大切に」と言われれば、古臭い道徳訓のように響くかもしれません。しかし、人間関係がもたらすメリットをはっきりと示すデータが、ここ数年の調査ではっきりとしています。

孤独だった人に友達ができた場合、最大で15年も寿命が延びる傾向があります。

健康への効果はエクササイズやダイエットの約3倍に当たり、なんと禁煙よりも「友人」の影響のほうが大きいとされています。

いくら富や名声を得ようが、病気にならない完璧な肉体を持とうが、人類の3つの「感情システム」は最適化されません。

身近な人たちとの関係が悪ければ「満足」の機能は活性化されず、手に入れたもののすべて無に帰すはずです。

もしあなたが幸福よりも富や名声を追うタイプの人間だったとしても、良い友人の重要性は変わりません。職場内で、人間関係が悪い人に比べ、良い友人が多い人は3倍も仕事で成功しやすく、年収も高い傾向も見られます。

「良い人間関係は私たちの脳を守ってくれます。周囲との良い関係を80代までキープできた人や何か困ったときに助けを求められる相手がいる人は、はっきりした記憶を長く持ち続けられます。しかし、困ったときに頼る相手がいないと、早い段階で記憶力が低下し始めるのです」

「孤独」から来る炎症で体調が崩され、さらには脳の機能まで衰えてしまうのだから、仕事のパフォーマンスが下がっていくのは当たり前の話。

「幸福」「富」「名声」「健康」はすべての人間関係の土台があってこそです。

「最新の科学」からみれば、「自然を大切に」や「友人を大切に」といったフレーズは、古臭いお説教などではありません。

遺伝と環境のミスマッチが起きた現代においては、「自然」と「友人」への投資こそが、もっとも費用対効果が高い行為なのです。

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