私たちの脳は、どうして覚えたことを忘れるようにできているのでしょうか。
それは脳が、生存に関わる重要な情報を優先して記憶するように進化してきたからです。
街ですれ違った人たちの顔、スマホで眺めたいくつものニュースなど、私たちの命の危機とは関係しない情報はすぐに忘れていきます。
これは生きるために必要な機能なのです。
とはいえ、忘れたくないのに、忘れてしまうこと、忘れてはいけないのに、忘れてしまうこともあります。
自分の意志で、記憶に留めておきたい事柄を選べるようになったら、こんなに便利なことはありません。
そんな願いを叶える方法があります。
それは記憶の仕組みを知り、効率の良い「復習」の仕方を実践すること。
学生時代の試験勉強のように無理に暗記するのではなく、思い出すための仕組みを作ることです。
【覚えているうちに復習しても効果は薄い】
まず、人間の記憶には短期記憶と長期記憶の2つ段階があります。
たとえば、本を読み、覚えたと思ってもすぐに忘れてしまうのは、記憶が長期記憶になっていないからです。
短期記憶に記憶しても新しい情報が入ってくるとすぐ忘れてしまいます。
では、どうすれば長期記憶に残りやすくなるのでしょうか。
その仕組みについては世界中の脳科学者や心理学者が研究を進め、記憶の流出を防ぐ復習のタイミングに関しては答えが出ています。
ベストな復習のタイミングは「忘れた頃に復習すること」です。
要するに「あれ、何だっけ?」「ここまで出かかっているんだけど……」という瞬間がベストなタイミング。
長らく「忘れないうちに復習するといい」とされてきましたが、これは間違いでした。
忘れないうちの復習は、短期記憶を何回も何回も繰り返しているだけ。
そのときはしっかり覚えたように感じても、長期記憶への定着は進んでいないので、すぐに忘れてしまいます。
一方、忘れかけたときに復習すると、先述した「生存に関わる重要な情報を優先して記憶する」という脳の性質が働きます。
その時生まれる、口惜しい、もどかしいよいう「強い感情」が記憶のキーになります。
「わざわざ思い出そうとしている=重要な情報に違いない」と長期記憶に定着しやすくなる、というわけです。
著者の場合、5分間は粘ります。
つまり、タイミングよく復習をし、思い出す作業=「想起」を行うことが脳と感情への刺激となり、記憶の定着につながります。
【記憶は思い出すたびに強化される】
こうした記憶の仕組みを利用し、読んだ本の内容を覚えていくために役立つ方法として私も実践しているのが、「ミニテスト」です。
手順は簡単です。
1.覚えたい内容の書かれたページを読んだら、いったん本を閉じます。
2.今、読んだページにどんな内容が書かれていたかを「想起」します。
読んだばかりのページなら簡単に思い出せそう・・・と思うかもしれません。
しかし、実際にやってみるとわかりますが、私たちの記憶力は曖昧で1、2分前に読んだページの内容もすぐにおぼろげなものになってしまいます。
最初は記憶に残したい1ぺージごとに「ミニテスト」を行い、慣れてきたら「1つの大見出しこと」「1章ごと」などで区切り、本を閉じましょう。
そして、「著者が一番言いたかったことは何だろう」「ここで一番おもしろい概念は何だっただろう」と、自分の頭の中でまとめていきます。
ペンも紙もいらず、見ないで思い出す「想起」を挟むだけ。
これで長期記憶に定着する確率は50~70%上がることがわかっています。
【一夜漬けは、長期記憶に残りにくい】
さらに、読んだ本の内容を鮮明に記憶し、活用していくために役立つ復習法が、「分散学習」です。
これは復習の間隔を少しずつ延ばしていくテクニック。
間隔を空けながらミニテストを繰り返すイメージです。
一度、長期記憶に定着させた情報を思い出すことで、自分が持っている他の記憶と結びつき、さらに深く覚えることができます。
一定の時間を空けて想起し直すことは脳に効果的な剌激を与え、記憶の定着率をさらに高めてくれるのです。
分散学習で気になるのが「どのくらい間隔を空けて復習するのがベストなのか?」。
この間隔についてピョートル・ウォズニアックという研究者が、英語の学習時のデータをもとに最適な復習のタイミングをまとめています。
1回目の復習は1~2日後に行う
2回目の復習は7日後に行う
3回目の復習は16日後に行う
4回目の復習は35日後に行う
5回日の復習は62日後に行う
このスケジュールは人間の記憶が薄れていく時間の平均値をベースに組み立てられたもので、前述した「忘れた頃に復習」できるよう調整されています。
ただ、ここまで細かくスケジーュールを合わせていくのは難しいので、著者は読書に関して復習のタイミングを3つに分けて実行しています。
1回目の復習は1日後に行う
2回目の復習は1週間後に行う
3回目の復習は1カ月後に行う
この間隔で復習=本を読み直すことで、内容への理解度を深め、重要なポイントをしつかりと記憶できるようになります。
読みながら覚えるのではなく、いったん本を閉じて内容を思い出す。
ぜひ今日から試してみてください。
↓ 参考書籍
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