親切にすると時間がのびる?

心理・思考・時間


時間術のひとつに「親切」が入っているのは、意外に感じられるかもしれません。


ただでさえ余裕がないのに、他人のために時間を使う暇なんてない、と思ってしまうのが普通です。


しかし、心理学的には完全に逆の話で、本当は他人のために時間を割いたほうが、自分の時間を有効に使えるようになるのです。


その事実を確かめた研究で、被験者を2つに分けて指示を出しました。


・自分のやりたいことをやる。


・他人のためになることをやる。


「自分がやりたいこと」をしたグループは、ToDoリストの作業をこなしたり、化粧をしたり、映画を見たり、行きたかったレストランを訪ねてみたり、それぞれ好きなことを選びました。


一方で、「他人のためになること」をしたグループは、公園のゴミのひろったり、隣に住む人の庭掃除を手伝ったり、友人や妻のために料理をしたり、一人暮らしの祖母に感謝の手紙を書いたりと、何らかの形で人の役に立つ作業を選んでいます。


その後、被験者に時間の感覚を調べたところ、他人のために時間を使った人は「この先やりたいことが何でもできそう」や「残された時間がたくさんある」と答える確率が激増し、最大で2倍も時間の感覚が伸びたと答えました。


さらに、その後で被験者の仕事ぶりを確かめてみると、他人に親切にした人ほど生産性もアップしていました。


どうやら、他人から感謝されたせいでモチベーションが上がり、仕事にも前向きになったようです。


この現象を、心理学では「自己効力感」といい、「自分は何か大事なことなしとげられる」という自信のような感覚です。


他人を助けるという行動は、誰かの役に立ったという確かな手応えを与えてくれます。


この感覚が自己効力感をアップさせ、最後は時間不足のストレスを減らしてくれるわけです。


時間のプレッシャーから解放されるうえに、仕事のスピードまで上がるのですから、まさに「親切」は最強のタイムマネジメントのひとつでしょう。



【正しく親切をする5つのポイント】


「他人のために時間を使う」といっても、急に大がかりなボランティア活動に参加する必要はなく、深刻に考えずに、ときどき他人のことを考えて行動するだけでも効果は得られます。


1,まずは相手に共感する。


友人に何かいいことがあったら、どれだけ自分もうれしい気持ちになったかを伝える。


逆に相手に悩み事やトラブルがあったら、どれだけ自分が不安な気持ちになったかを言葉で伝える。


これだけでも、他人への親切としては十分に機能します。


友人のトラブルを解決しようと頑張る必要はなりません、向こうに対して、こちらがどんな気持ちを持ったかをしっかり言葉に出すのが、もっとも重要なポイントです。


2,相手のミスに寛容になる。


大事なものを失くしてしまった、会社に損害を与えてしまった、仕事で間違った発注をしてしまった・・・


そのような大きいミスをした人がいたら、優しい言葉をかけてあげるのも正しい「親切」の一例です。


「誰にでもそういうことはある」や「自分も同じ失敗をした」などと声をかけてあげれば、向こうの気分が良くなるだけでなく、あなたのメンタル改善にもつながっていきます。


その時、相手の失敗を解決しようと試みたり、「失敗から学ぶのが大事」などアドバイスを送るのは逆効果で、ただひたすらに寛容な言葉をかけてあげるのが、心理学的に正しい「親切」です。



佐藤さん

私は相手の問題を解決しようとしたり、アドバイスを送ることが多い気がします。反省ですね・・・



3,他人に害がある行為は全力で避ける。


意外と見過ごされがちなのが、「他人への害を避ける」というポイントです。


「親切」というと、つい誰かのために時間を使うことばかり考えてしまいますが、実は「人にネガティブなことをしない」と意識して気をつけるだけでも、あなたのメンタルは確実にストレスに強くなります。


例えば、「自分が怒りそうになったら静かにその場から立ち去る」のもいいですし、「会話が白熱して嫌なことをいいそうになったら深呼吸をする」のもいいでしょう。


人間は知らずに他人を傷つけがちな生き物なので、相手が嫌な気持ちになることをさけていくだけでも、れっきとした「親切」です。


5,わがままな行動は我慢する。


私たちの心は、基本的に自分のことばかり考えて生きるように作られています。


これは人間の基本的な性質なので、どうすることもできません。


しかし、これを逆に考えれば、「他人を中心に考えて見る」だけでも簡単にあなたの希少価値は上がり、「親切」の効果もアップすることになります。



【ヘルパーズハイを目指せ!】


研究によれば、あくまで大きな親切は必要なく、1日5分の親切でも時間の感覚には十分な変化が起きています。


自分にやれる範囲で、小さな親切を積み重ねていけばいいのです。


具体的には「SNSで友人の投稿に「いいね」をつける」や「職場の同僚にお菓子を配る」「家族に雑談の電話をする」「後ろの人のためにドアを開けてあげる」など、また「コンビニで100円募金する」「人の話を熱心に聞く」「誰かの役に立つ記事をブログに書く」「読み終わった本を図書館に寄付する」・・・


「それぐらいでいいの?」と思われるかもしれませんが、以上の事例は、すべて実際の研究で効果が確認されています。


ある実験でほ、このレベルの小さな親切を6週間にわたって続けた被験者は気分が大きく改善し、なかにはうつ病が改善したケースまでありました。


「小さな親切」でメンタルが改善するのは、脳にドーパミンというホルモンが分泌されるからで、ドーパミンは神経伝達物質のひとつで、私たちのモチベーションを上げて、仕事や学習能力を高める働きを持っています。


他人に親切にすると、脳が「誰かの役に立った!」と快感を得て、その瞬間に大量のドーパミンが分泌され、一気に自分のなかにやる気が生まれ、ストレスに強くなり、最終的には時間が伸びたかのような感覚につながっていきます。


ポジティブ心理学者のソニア・リュボミアスキー博士は、この状態を「ヘルパーズハイ」と呼んでいて、ランニングを続けるうちに幸せな気分になる「ランナーズハイ」の親切バージョンを考えてもいいでしょう。



【親切を正しく使う4つのコツ】


「新切」にはメンタルの安定に欠かせないツールですが、薬に正しい用量用法があるように、人のために時間を使いすぎるのも良くありません。


事実、多くの研究では、「親切」のしすぎでメンタルに悪影響がでてしまうケースも確認されているからです。


「親切」の正しい用量用法を守るためのポイントは4つあります。


1,自分を犠牲にしてまで相手を助けない。


まずありがちなのは、自分の時間を必要以上に割いてまで、他人を助けようとしてしまうケースです。


その気持ちは尊いものですが、ある研究によれば、仕事で他人の手助けばかりしている人は、最終的にはその負担に耐え切れなくなって、ワークライフバランスが崩壊してしまう確率が高くなりました。


手伝いすぎはストレスを高め、健康まで損なってしまう可能性があります。


正しい「親切」は、投資の考え方と同じで、あくまで投資は余った資金で行うのが正しいのと同じように、「親切」も余った隙間時間を有効に使うのが大事です。


2,「一日一善」より「週一五膳」


運動や勉強は毎日少しずつやるのが基本です。


たいていのことは日々の積み重ねが大事ですが、「親切」に関しては違う結果が出ています。


1日1回ずつコツコツと人助けをした人よりも、週に1日だけ5回の親切をまとめてこなした人の方が、最終的にはストレスに強くなりやすい傾向がありました。


1日1回ずつコツコツと親切をしていくと、どうしても個々の行為のインパクトが弱くなります。


そのせいで、自分が他人のために役に立った感覚が薄れてしまうのです。


3,親切は1年に100時間まで。


1年に費やすべき「親切」の総時間に関しても、おもしろいデータがあり、2千人のオーストラリアの人を対象に行われた実験によれば、


「年に800時間のボランティア活動をした人」と「年に100時間のボランティア活動をした人」の2つのグループを比較したところ、「年100時間」の人たちのほうが幸福度が高く、ストレスにも強い傾向がありました。


このほかの研究でも、だいたい「100時間ルール」がベストだと結果が出ており、これより多く他人のために時間を使うと、逆に親切が毎日負担になってしまい、メンタルには逆効果のようです。


つまり、正しく親切を行うためには、1週間に2時間くらい、他人のために使えばOKです。


4、自分にとって意味のある「親切」をする。


当然ですが、イヤイヤながら他人のために時間を使った場合には、「親切」の効果は得られません。


義務的に人助けをした場合は、幸福度のアップの効果は消え、ストレスに強いメンタルも育ちません。


せっかく、「親切」をするのだから、自分にとって意味があるか、あなたの好きな人のために時間を使うか、単純にやっていて楽しい作業をしましょう。


このあたりの感覚はひとによって違うので、自分が心から好きだと思えるような行動を選んでください。


↓ 参考書籍

コメント