ストレスは、人間を落ち込みやすくします。
そして、落ち込むと、自分本来の力を発揮できなくなります。
ですから、どんなに準備をしていても、落ち込んだ状態を乗り越えるのが難しくなります。
では、どうすればいいのでしょうか。
普通は、すぐに落ち込みを解消したいと思いますよね。
それ自体は悪いしといけないことではないのですが、「落ち込みはすぐに直さない」「この気持ちはよくないものだから、すぐに消さなければ」と思いすぎると、落ち込むのが怖くなるというデメリットが生じます。
そこで、落ち込んだときは、まず落ち込んだ気分を使って結果を出して、それからゆっくり落ち込んでいる気分を直すという、ちょっと変わった提案をしたいと思います。
じつは、ネガティブな感情というのは、私たちにとって悪いことばかりではありません。
他人に対する怒りの感情には、勇気をアップする効果や頭の回転を速くする効果があり、罪悪感には倫理観を増幅させる効果があるのではないかといわれています。
また、不安には、集中力や警戒心を高める効果があるため、何かに向けて準備したり、何かにがんばって取り組んだりするときには、意外と不安の感情は悪くないのです。
さらにいえば、悲しいときは、ウソを見抜く能力が高まることもわかっています。
悲しんでいる人は、弱っているので一見だましやすそうですが、意外とウソを見抜いてだまされないのです。
たとえば、浮気がばれてパートナーから問い詰められたとき、ごまかそうとしてウソをついても、悲しんでいる相手には簡単に見抜かれるといいます。
このように、ネガティブな感情である怒りや悲しみなどがどう役に立つのかを知っていれば、その効果を十分に発揮することができるのです。
カナダのクイーンズ大学が、人間が落ち込んでいるとき、気分が沈んでいるときについて行なった研究によると、気分が沈んでいるときは、なんと人間は注意力が高まるといいます。
とくに、細部に対する注意力が高まり、物事を細かく分析することができるようになるのだそうです。
たしかに、落ち込んでいるときや悲しいときというのは、人から何かちょっと言われただけでも細かいところを気にしがちですが、あれは「気にしている」というよりは‘分析能力が高まっているから、細かいところに目が向いてしまうのです。
裏を返すと、悲しいときや落ち込んでいるときこそ、その分析能力の高まりを活かして、自分が解決したい問題や仕事に目を向けるといいということです。
私(著者)も落ち込んだときには、自分の動画に関するデータや、トレンドの検索キーワードなどに向き合うようにしています。
細かい部分への集中力が高まっているので、こういうときに分析すると、いい結果につながることが多いのです。
ですから、最近はちょっと落ち込むのが楽しくなったりしています。
気分が落ち込んだときは、よくない状態にあるので、細かいところに目を向けて、そこから脱出し、改善するヒントを探さなければなりません。
そう考えると、人間は気分が落ち込んだときのほうが注意力が高まるようにできているのかもしれません。
では、逆に、ポジティブなときはどうなのかといえば、大局を見る力がアップします。
一歩引いて、大きな視点で物事を見る能力が高まるので、将来について大きなビジョンを描くことができたり、クリエイティビティが上がったりします。
つまり、一つひとつ細かく分析するのはネガティブな気分のとき、大局を見て遠い未来のことを考えたり、クリエイティブなアイデアを出したりするのは、ポジティブな気分のときがいいのです。
長期的な視点で物事を見だいときはポジティブに考え、短期的には、ちょっとネガティブに考えることによって、分析し、足元をすくわれないように着実に進めることができるわけです。
どちらがいい悪いではなく、この両方を上手に使うことが大事です。
このように、ネガティブな感情も、うまく使えば役に立つことを知っておいてください。
ただ、ずっとネガティブなのはよくありません。
というのも、長期的なストレスがあると、脳の中で記憶を司っているといわれる海馬が萎縮することがわかっているからです。
落ち込んだときには、分析することで結果を手に入れ、それからゆっくり自分のメンタルを元に戻すようにしてください。
ちなみに、私はメンタルを戻すために、「エクスプレッシブ・ライティング」を行なっています。
これは、自分がいま感じている感情を紙に書くとうもので、8~20分くらい、ひたすら書いていきます。
こうすることで、メンタルがかなり落ち着きます。
この「エクスプレッシブ・ライティング」には、書き方を変えるだけでモチベーションが上がったり、ダラダラ癖を直すことができたりと、いろいろな効果があるといわれていますので、皆さんも、ぜひ参考にしてください。
やり方をくわしく知りたい方は拙著『人生を変える記録の力』〈実務教育出版〉を参照してください。
↓ 参考書籍
コメント