筋トレは「前日の夜」から始まっている

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【睡眠不足は身体にもメンタルにも影響する】


まず知って欲しいのは「筋トレはジムに行ってから始まるものではない」ということ。


スポーツ科学では、睡眠の重要性が科学的に証明されています。


2012年、イギリスのスポーツ機関で睡眠時間によるトレーニング効果への影響について調査が行われました。


被験者として集められたアスリートは睡眠時間8時間以上のグループと睡眠不足6時間未満のグループに分けて、それぞれベンチプレス、スクワット、ベントローといった、多関節トレーニングを行いました。


その結果、睡眠時間が6時間未満のグループは、8時間以上のグループに比べ、各トレーニングの総負荷量が減少していたそうです。


睡眠不足はトレーニングの効果を減少させることが証明されました。


こうした睡眠不足による影響は身体面だけではなく、精神面にも影響を与えます。


2018年に報告されたアスリートを対象にしたレビューでは、睡眠不足がモチベーションや集中力を低下させるとともに、気分の悪い状態(イライラ)を作り出し、過剰な重量や回数によるオーバートレーニングを生じさせる危険性が示唆されています。


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【睡眠不足で筋肉に取り込まれる「糖」が不足する】


睡眠不足は多関節トレーニングに影響するか・・・その原因と考えられるのが「筋グリコーゲンの減少」です。


筋グリコーゲンは筋肉に蓄えられる糖のひとつで、筋肉が収縮するためのエネルギー源になります。


筋トレはジョギングなどの有酸素運動よりも無酸素運動に近い運動様式です。


有酸素運動は酸素と筋グリコーゲンをエネルギー源として使用できますが、無酸素運動は酸素が利用できないため、筋グリコーゲンのみがエネルギー源になります。


睡眠不足はこの筋グリコーゲンを減少させることが示唆されているのです。


2011年に睡眠不足のアスリートを対象に筋グリコーゲン量の検証が行われ、通常の睡眠時と比べて睡眠不足では、筋グリコーゲン量が有意に減少していることが示されています。


また、糖を身体に取り組む役割を担っているのが、インスリンです。


睡眠不足はこのインスリンの機能も低下させてしまいます(インスリンの抵抗性)。


2017年に睡眠不足がインスリン抵抗性に与える影響について検証され、睡眠時間が通常の半分の時に、インスリン抵抗性が有意に増加することがわかりました。


多関節トレーニングは多くの筋肉が動員され、そのためエネルギーの消費量も多く、多くの筋グリコーゲンが必要となります。


睡眠不足はインスリン抵抗性を増加させ、筋グリコーゲン量の減少を招くため、多くの筋グリコーゲンを消費する多関節トレーニングのパフォーマンスが低下してしまうのです。



【ハーバードが教える、睡眠の「3つの敵」と対策】


では、最高のコンディションでトレーニングに挑むには、どのように睡眠の質を高めれば良いのでしょうか?


報告によれば、「カフェイン」「タバコ」「アルコール」の3つを控えるべきであることがわかっています。


・トレーニング前日の午後2時以降のカフェインを控える。


良質の睡眠を得るためには、トレーニング前日の午後2時以降のカフェインの摂取は避けること。


ただし、習慣的にカフェインを摂取している人は、急に摂取を控えると頭痛や極度の疲労を誘発することが報告されているため、徐々に摂取量を減らすことが良質な睡眠を得るために推奨されています。


・入眠2時間前から、「喫煙」を控える。


タバコに含まれるニコチンは中枢神経系の興奮物質であり、不眠症を引き起こす可能性があります。


ニコチンは心拍数を速め、血圧を上昇させ、覚醒を示す速い脳波活動を刺激するため入眠を妨げます。


良質な睡眠を得るためには、入眠2時間前には喫煙を控えてください。


・「アルコールでよく寝れる」は嘘。


一般的にアルコールは、神経系を刺激して深い眠りであるレム睡眠を抑制してしまいます。


習慣的にアルコールを摂取している場合、よく夢を見たり、頻繁に覚醒してしまうことが報告されています。


さらに、アルコールは、いびきや睡眠時の呼吸を悪化させることが示唆されています。


そのため、過度なアルコールの摂取は睡眠を妨げる可能性があり、アルコールを控えることが推奨されているのです。


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