知らないことを聞ける人を増やすのが、財産を増やすこと

心理・思考・時間

退屈な人は千人に一人しかいません。そして、千人に一人しかいないぐらいだから、それはおもしろい人間です。ー イギリスの政治家ハロルド・ニコルソン

松下幸之助さんは小学校卒である。

いまよりずっと学歴偏重の時代だったから、並の人なら学歴コンプレックスに陥ってもしかたがないところだ。

だが、松下さんは、そうはならなかった。

「知らないことは、知っている人に聞けばいい」という柔軟で率直な人だったからである。

四畳半一間程度の工場から始めた電器会社を世界のナショナルといわれるまでに育て上げ、経営の神様と称賛されるようになっても、その姿勢はまったく変わらなかったと聞く。

松下さんにインタビューに行く。

たとえば1時間の予定をとってあったとすると、「ほな最初の30分は私が話しましょ。残りの30分は、あんたはんが何かおもしろい話を聞かせてください」というのだそうだ。

松下さんの偉いところは、自分の聞きたいことをちゃんともっていて、「これこれはいま、どうなってますの?」などと具体的に相手に質問を向けることだった。

きちんとした質問を受ければ、たいていの人は、その質問にきちんと向き合った話をする。

松下さんのところにインタビューに来る人は第一線のジャーナリストが多かったから、有意義な話や貴重な情報が聞ける場合も多かっただろう。

結果的に、松下さんはいながらにして豊富な情報を入手し、ますます経営に冴えを発揮できたのかもしれない。

著者も、松下さんほどではないが、毎日、いろいろな方にお目にかかり、話をする機会が多い。

どんな話でも、こちらが柔軟な感度をもっていれば、自分に生かせる情報を必ず含んでいるものだ。


隔月に開かれる旅行作家協会のパーティーなどはまさに情報の宝庫である。

何回も行った国でも、また絶対、行きたくなってしまう情報が次から次へと耳に飛び込んでくる。

みな、旅のプロだから、その情報はどれも値千金なのだ。

昔、永六輔さんが、「人と1時間話をすれば、厚い本を1冊読んだのと同じくらい何かを得るものだ」といっていた。

私もまったく同感だ。

率直に話すことが最もよい態度である。古代ギリシャの詩人ホメロス

いろいろな人と会うことで自分を磨き上げた人の一人に、セブンーイレブンの総帥・鈴木敏文さんがある。

鈴木さんは、大学在学中に学生運動にかかわっていたことから一般企業への就職は最初から志願せず、マスコミに的を絞ってトーハンに就職した。

出版流通の最大手企業である。

ここで鈴木さんは『新刊ニュース』の編集にかかわり、毎日のように作家や財界人など、一家をなした人と会い、インタビューする機会に恵まれた。

さすがに、どの世界でも、人に名を知られるほどの成功者はさまざまな教えに満ちた存在感をもっているものだ。

インタビューの間にかわす世間話や、その人から伝わってくる余韻のようなものなど、有形無形の語りかけを受け止めるうちに、鈴木さんの精神世界は知らず知らず柔らかく耕され、さまざまな企画を思いつくようになっていった。

だが、トーハンは大企業だ。

大学を出たての若造の企画には、誰も耳を貸してくれなかった。

こうしたことから、鈴木さんはやがてトーハンを退社し、当時たった5店舗しかなかったスーパーのヨーカ堂(現在のイトーヨーカ堂の前身)に転職する。

スーパーの新規出店につきものなのが、地元の小規模小売り店との交渉だ。

さまざまな分野の成功者の話を聞いてきた鈴木さんは、地元の商店が規模でスーパーに勝てないなら、ほかの要素を導入すればよいのではと考えるようになっていった。

そんな考えを温めていたとき、アメリカでコンビニエンスストアという新しい業態に出会い、「これだ!」とすぐさま、セブンーイレブンとの提携を提唱したのであった。

ふつうは、著名人に会う機会など希有だろう。

だが、本やメディア、講演会などを通じて、考え方に触れる機会は誰でもつくれる。

こうして自分を太らせていこう。

佐藤さん

「成功者」「社長」の方とお話する機会が、何度かありました。やはり何か?「余裕」があり、場慣れしているモノです。何かを始めたい方は、その分野での「成功者」に話を聞く、会いに行く、書籍を読むなど「行動」することですね。

↓ 参考書籍

コメント