【日本人の労働時間は減り続けている】
時間について一番ありがちなのが、「私は物理的に時間がない」という勘違いです。
そのせいで「いつも時間が足りない」「本当にやりたいことがやれない」などと感じてしまい、心に余裕が持てません。
いまの世の中で時間不足が当たり前になりすぎていて、たいていの人は疑う気持ちすら起きないはずですが、実際にはあなたは十分な時間を持っています。
「労働時間の推移」に関するデータを見ると、1970年の日本人は年に2200時間ほど働いていましたが、2016年の時点ではこの数字が1713時間まで下がり、アメリカやロシア、ギリシャなどの労働時間よりも少なくなっています。
理由は様々で、法律の改正や働き方の変化などいろいろな要素が考えられますし、なかにはいまだに月に100時間以上の残業が当たり前の会社もあります。
しかし大きく見れば、世間的に言われるほど、現代人の時間が無くなったわけではなさそうです。
それでは仕事の時間が減った分だけ、いまの人は時間を楽しんでいるのでしょうか?
データを見ると不思議な事に、現代人は昔より働いていないのにも関わらず、趣味や娯楽、レジャーなどに使う時間は減っているそうです。
総務省の「社会生活基本調査」にもとづく一橋大学の研究によれば、1976年の頃は多くの人が週当たり104~111時間の余暇を持っていましたが、2006年にはおよそ105時間まで低下しています。
毎日の楽しみに使うための時間は、今もジリジリと減り続けています。
消えた時間はどこに消えたのでしょう?
「人のために使った時間を費やした一日は、自分のために時間を使わなかった一日である」 ー チャールズ・デェケンズ(イギリスの小説家)
【現代人は週に40時間を余らせている】
働く時間は減っているはずなのに遊ぶ余裕がない・・・
なんとも不思議な話ですが、この現象は日本だけのものではないようです。
アメリカで「アメリカ人はどのように時間を使っているか?」という調査で、数十年にわたって記録した結果、アメリカ人は「忙しすぎて時間がない」と考えているのに、実際に働いている時間は想像よりも少なかったようです。
具体的な調査結果は、多くのアメリカ人は「自分は週に60~64時間は働いているはずだ」と答えましたが、実際には1週間の労働時間は平均で44.2時間だった。
実際の労働時間に対して20時間も誤差がありました、また「自分は他人よりも働いている」と答えた人ほど、さらに誤差が大きくなる傾向があったそうです。
他の国でも調査を行った結果「アメリカだけではなく、世界中の人が実際に仕事に使っている時間の合計は、過去40年間でまったく増えていないどころか少なくなっている」。
これは行動記録を使った研究で明らかになっていて「あなたたちは、実は毎週40時間の自由な時間を余らせているんですよ」と言っても信じてくれないでしょう。
現代人の「時間不足」は、あくまでも勘違いだというわけです。
「1分遅れるくらいなら、3時間早い方がまし」 ー ウィリアム・シェイクスピア(イギリスの劇作家)
【まずは「自分は思ったよりも忙しくない」事実を認める】
人間の性質を利用した「時間術」に、「細かい締め切りを設定する」というテクニックがあります。
「この作業は15分でやる」「3時までに企画書を書く」などのように、あらかじめ小さなブロックで時間を区切っていく手法です。
こうすることで私たちの中に焦りが生まれ、一時的に高い成果を上げられます。
締め切りによって架空の緊急事態を作り出したおかげで、本当は余っていた時間を有効に使うことができるわけです。
「背水の陣」「火事場の馬鹿力」「窮鼠猫を噛む」など限界状況に追い込まれた人間が、実力以上の力を発揮することは、昔から言われています。
脳科学的に説明すると人は追い込まれると、脳内でノルアドレナリンが分泌され、集中力が高まり、学習能力を高め、脳を研ぎ澄ませます。
結果として最高のパフォーマンスを発揮することができます。
【仕事の達人たちも推奨する「ストップウォッチ仕事術」】
ストップウォッチを使って、時間を「見える化」すると、さらに効率がアップします。
「この書類は、今から1時間で完成させる」と決めたら、ストップウォッチをスタートさせます。
すると、仕事がゲーム感覚になり、モチベーションが上がり、時間どおりに達成出来ると、ゲームをクリアしたときと同様の快感が得られます。
ストップウォッチではなく、アラームで時間制限をする人もいるでしょうが、アラームだと時間内に仕事が終わらない場合、集中力が高まった最後の追い込みの瞬間にアラームが鳴る可能性があり、せっかく高まった集中力がリセットされてしまい、台無しになります。
仕事術や読書術などたくさんの著書を出されている、明治大学教授の齋藤孝先生や、脳科学者の茂木健一郎先生もストップウォッチを愛用しているそうです。
ここで注意してもらいたいのが、設定したデットラインがあくまで「架空の緊急事態」でしかない点です。
そのせいで頭の隅にはいつも「この締め切りは本当は守らなくてもいいものだ」といった思考がこびりつき、ジワジワとモチベーションが下がっていきます。
ここで、もし決めたとおりに作業が終わらなかった場合、事態はさらに悪いことになります。
私たちの脳が「締め切りは破っていいものだ」という事実を学習し、どんどん締め切りの効果が薄れていくからです。
もう一つは「細かい締め切り」というテクニックが、不安や焦りといった、人間のネガティブな感情を利用している点です。
交感神経には、刺激して体のストレス反応を引き出す作用があります。
これは、一時的に集中力を高めてくれるものの、長く使うと少しずつダメージが蓄積されていき、やがて体を壊す原因になってしまいます。
私も「締め切り設定」を使うときは、あくまで「目安」として自分の中で設定しています。急な仕事や用事が舞い込むことが多い私は、優先順位を入れ替えながら使っています。
「明日の花はすべて、今日蒔いた種から咲く」 ー 中国のことわざ
【「忙しい」の口癖をきっぱりやめよう!】
「忙しい」と口に出すたびに、あなたの意識は未来や過去に向かい、そのせいで目の前の本当にやるべきことに集中できなくなります。
こうなると予定していた作業はどんどん遅れてしまい、本当は余っていたはずの時間が無意識に浪費されるわけです。
言われてみれば、現代のライフスタイルで「現在」「今」に集中できないケースはよくあります。
いつも未来や過去への心配ばかりしていて、よく考えてみたら、1日のうちで「現在」「今」に集中できた時間がまったくなかった・・・という人も多いのではないでしょうか?
「忙しい」の代わりに「活動的だ」や「活発的だ」などの言葉を使うようにすると、学生を対象にした実験で「忙しい」を使うのを止めた被験者は、3か月後の成績が大きくアップしたそうです。
真の「時間術」をマスターするために、さらにあなたが「時間がない」と感じる本当の原因を理解して、余った時間を有効に使うのがベストです。
「無駄にした時間を最も嘆くのは、最も賢い人である」 ー ダンテ(イタリアの詩人)
【時間汚染を防げ!】
普段から「〇〇をしながら〇〇をする」ような事はないでしょうか?
例えば、SMSを見ながら勉強する、音楽を聞きながら仕事をする、スマホを見ながら食事をする・・・心当たりがあるなら、今日からすべてやめるべきです。
複数の作業を同時に行う「マルチタスク」は、あなたの時間の感覚をゆがめてしまう大きな原因になるからです。
現代人がひとつの作業に集中して取りかかれる時間はたったの15分。
いったん作業が中断すると、再びもとの作業に取りかかるまで25分もかかってしまいます。
さらに、他のことをしながら作業した場合、脳の回転や集中力など、すべての面で生産性は40%下がり、ひとつの作業を終えるのにかかる時間と作業ミスが起きる確率が50%も増えてしまいます。
「ながら作業」は効率アップの大敵です。
社会学者のジョン・ロビンソン博士は、「ある作業から別の作業へ何度も注意を切り替えると、そのたびに時間に対するプレッシャーは増える」と言っています。
マルチタスクをすると、あなたの脳にストレスがかかり、偏桃体という感情をコントロールするエリアが活性化して、脳はまるで時間が細切れになったかのような思い込み、つねに時間に追われているかのように感じてしまいます。
細切れに作業をするせいで、大きな時間の流れがバラバラに断ち切られ、結果として感覚がおかしくなってしまう現象が起きてしまいます。
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