最強のウォームアップ

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【非科学的だったウォームアップ】


トレーニング効果を最大化させるために、どんなウォームアップをすればよいのでしょう。


科学的に正しいウォームアップの方法論が検証され始めたのは近年のことです。


それまでウォームアップの方法論はトレーナーの経験論にもとづき、試行錯誤的に発展してきました。


実際、ウォームアップについての主要な研究報告が、2003年を最後に10年以上の空白が続いています。


そのため、トレーニング効果を高めるためのウォームアップの方法論の確立が遅れていたのです。


2010年にようやくトレーニングのための具体的なウォームアップについての研究結果が報告されるようになり、2015年にはウォームアップの生理的な機序からパフォーマンスへの効果までをまとめたレビューが報告されました。


ストレッチによりケガを予防し、有酸素運動によって筋肉の温度を高め、その後に特異的ウォームアップにより神経活動を活性化させる。


この一連の流れで行うと、トレーニングのパフォーマンスを高められると述べています。



【有酸素運動を10分が望ましい】



ウォームアップとはその名のとおり筋肉が「暖める」ことを意味します。


ウォームアップにより筋肉の温度が1度上昇すると最大等速性筋力が4.7~4.9%増加し、垂直跳びの高さが4.2~4.4%増大することがわかっています。


では、どのような方法によって筋肉の温度を上げれば良いのでしょう。


答えは、ジョギングやペダリングといった有酸素運動を中等度の負荷(最大心拍数の60%)で10~20分間行うウォームアップ方法を推奨しています。


最大心拍数はよく、「220ー年齢」とされていますが、「208ー0.7✕年齢」の計算式により、もっと正確に最大心拍数を予測できることが、メタアナリシスの結果で示されています。


佐藤さん
佐藤さん

私は45なので「208-0.7✕45」なので「176.5」になりますね。筋トレしているときは「150」前後の心拍数でやっています。


例えば30歳であれば、「208-0.7✕30」なので最大心拍数は「187」、ウォームアップは最大心拍数の60%である「112泊/分」を目安に10~20分間行います。


有酸素運動を10分程度行うと筋肉の温度が2~3度上昇し、少なくとも20分までには温度がピークを迎えるという知見が根拠になっています。


これがウォームアップには「10分間以上の有酸素運動を取り入れよう」と言われる理由なのです。



【特異的ウォームアップ】


さらに重要なウォームアップと言われているのが、「特異的ウォームアップ」です。


特異的ウォームアップとは、スクワットやベンチプレスなどのトレーニングの前にそれと「同じ運動」を軽い強度で行うというものです。


有酸素運動によるウォームアップは筋肉の温度を上昇させることによって筋肉や収縮速度を増大させます。


それに対して、特異的ウォームアップは「神経・筋活動の活性化」により、トレーニングの運動強度と運動回数をさらに高めます。


野球のバッターは打席に入る前に素振りをします。


ピッチャーはマウンドに上がる前に投球練習をします。


ピッチャーがマウンドに上がる前にバットの素振りをしても投球パフォーマンスは高まりません。


これはウォームアップの特異性を示しており、「同じ運動を軽い負荷で行う」ときこそ、神経活動の増強、脊髄の反射的電気活動の増大、筋肉内カルシウムイオンの増加といった生理学的な作用が働き、パフォーマンスの向上に繋がることが明らかになっています。


有酸素運動によるウォームアップに特異的ウォームアップを加えることによって最大筋力が高まることを明らかにしました。


トレーニング経験のある被験者を対象にして、特異的ウォームアップのみを行うグループと、有酸素運動の後に特異的ウォームアップを行うグループでレッグプレスの最大筋力を測定しました。


特異的ウォームアップは最大筋力の50%で8回、70%で3回行われ、有酸素運動は最大心拍数の60%の負荷で20分のペダリングが行われました。


筋力の発揮は、運動神経とそれが支配する筋繊維で構成される運動単位の動員で決まり、特異的ウォームアップにより神経活動が促進され、運動単位の動員が促進された結果、最大筋力が増強したと推測されています。


これらの結果から、特異的ウォームアップが運動強度や運動回数を増加させ、総負荷量を増やすことによって、筋肥大を目的としたトレーニング効果に寄与することがわかります。


実際のトレーニングでは、行おうとしている種目の最大筋力の30%程度の低強度から行い、段階的に目標としているトレーニング強度に近づけていくのが良いでしょう。


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