愛は腸内細菌によってつくられている・・・著者はそう考えています。
「まさか、そんなワケないでしよ」と思っている方も多いでしょう。
しかし、恋する気持ちを引き起こす物質、いわば「恋愛物質」が腸内においてつくられているのです。
その恋愛物質の正体はドーパミン。
きっと、みなさんも聞いたことがおありでしょう。
快楽を刺激してやる気を引き起こす神経伝達物質。
人が何かを好きになってやめられなくなったり、誰かをどうしようもなく好きになったりするのも、このドーパミンの働きによるものです。
恋をし始めてだんだん夢中になってくると、もうその人のことしか見えなくなってくるものです。
恋は盲目といいますが、要するに、その「あなたしか見えない」という状態をドーパミンがつくり出しているのです。
そして、このドーパミンの前駆体を腸内で合成し、脳に送り出しているのが腸内細菌です。
腸内細菌が多く、活発に働かせている人は、ドーパミン生産量が多く、より恋愛を活性化させやすい状況をつくっています。
反対に、腸内細菌が少ない人は、細菌たちが十分に働かず、ドーパミン生産量が少なくなって、より恋愛に傾きづらい状況をつくってしまっているということになります。
もっとも、ひとつの恋愛でドーパミンが大量分泌される期間は、だいたい最初の2~3年くらいとされています。
これを過ぎると、急に愛情が冷めてきて、「どうしてこんな人を好きになったんだろう」と首をかしげる事態になることも少なくありません。
ただ、この場合も腸内細菌の量を多く保っていれば、ドーパミンの分泌量低下を防ぎ、愛が冷めるのを防ぐことができます。
また、ドーパミンの出が落ちてきたとしても、その代わりにβーエンドルフィンや、オキシトシン、セロトニンなどの分泌が活性化してくることが多く、こうした物質がたくさん出ていれば愛が長続きするようになります。
いずれにしても、恋愛というものは、わりと最初の勢いが大事で、勢いに任せてそのまま結婚というパターンも少なくありません。
そして、そのためには、恋する気持ちを勢いよく牽引していくドーパミンの力が不可欠なのです。
ですから、恋愛や結婚を成就させるには、腸内細菌をたくさん持っていて、ドーパミンを多くつくっている人のほうが有利に働くということがいえるのではないでしょうか。
なお、マウスによる研究では、腸内細菌が求愛行動の多さに関係しているとする報告もあります。
アメリカ・カリフォルニア工科大のイレイン・シャオ博士は、求愛の働きかけが少ないマウスに腸内細菌がつくる「4EPS」といこの物質が異常に増えていることを発見。
この物質を取り除くクスリをマウスに飲ませたところ、求愛の働きかけやコミュ二ケーションが大幅に増えたというのです。
人間の場合もこうしたコミュニケーションが苦手な人は少なくありません。
とくに男性の場合、女性に対して積極的に働きかけられないオクテの人が増えてきているような気がします。
この研究はマウスを対象としたものであり、人間に当てはまるとは限りません。
ただ、もし腸内細菌がこうした行動に関係しているのだとすれば、将来的には腸内細菌をコントロールすることによって求愛などのコミュニケーションを活発化させることもできるようになるのかもしれません。
とにかく、恋愛や結婚がうまくいくかどうかにも腸内細菌が関わっているのです。
まあ、いってしまえば、 恋愛や結婚は「繁殖する相手」を見つけるための活動のようなもの。
もともと腸には繁殖するための機能が搭載されているわけですから、恋愛や結婚をスムーズに運ぼうとする働きが腸にあっても別に不思議はありません。
それに、腸内細菌にとってみれば、結婚相手が見つかって生活が落ち着けば、エサが安定して入ってくることにつながります。
だから、腸内細菌たちには、繁殖相手をなるべくすみやかに見つけようとするような働きが組み込まれているのかもしれません。
【腸を元気にすれば、性欲は甦ってくる!】
近年、日本人の「性」のバイタリティーがかなり落ちてきているような気がします。
性への執着の薄い「草食系男子」がマスコミの話題になってからすでに久しいですし、適齢期をとっくに過ぎたにもかかわらず結婚しない男女が増えてきました。 ← 私ですね・・・
著者の知り合いにも、40代、50代になっているというのに独身の方が何人もいます。
それに、たとえ結婚しても、セックスレスになる夫婦が少なくありません。
日本人は世界中でもいちばんセックスの回数が少ない民族だとされています。
上記のグラフを見ても、わが国日本は最下位・・・これでは少子化は止まりませんね。独身中年の私のような人が原因を作っているのでしょう・・・すいません。ですが!「性欲」は若い人には負けません!
こうした状況では、少子化が深刻な社会問題になるのも当然かなという気がします。
いったいどうしてこんなにバイタリティーが落ちてしまったのか。
もちろん、いろいろな要因があるのでしょう。
経済不況や仕事のストレスなどの影響もあるのかもしれません。
ただ、著者は、日本人の腸の力が落ちてきたのも大きな要因のひとないかと見ているのです。
そもそも、著者は「原始的な食欲」や「原始的な性欲」は、脳ではなく腸で感じ取っているのではないかと見ています。
それは、脳がなく、腸だけで生きているようなミミズなどの生き物が「食生活」や「性生活」を何の問題もなく営んでいることからもわかります。
ミミズのセックスがものすごいと言われています。
外部リンク → ミミズの交尾
すごいのはミミズだけではありません。
ミミズに近いゴカイの仲間などは、普段は浅瀬の砂のなかにもぐってじっとしているのですが、新月や満月を数日ほど過ぎた晩、一斉に海面に浮き上がってきて生殖行動を行うのです。
つまり、ミミズやゴカイのような腸だけで生きている生き物でもセックスができるし、性欲もある。
腸には、食欲だけでなく性欲も搭載されているのです。
ただ、その後、脳を持つようになった生き物は、脳において食欲や性欲をキャッチするようになっていきました。
脳という器官は、より効率よく食べ物を得たり、より効率よく生殖相手を見つけたりするために備えつけられた「作られそうなものやセックスできそうな相手を見つけ戦室」のようなもの。
食べたら、その欲求を増幅させて、可能な限りすみやかにコトを成就させようとするわけです。
つまり、食欲と性欲とは、同じような流れをたどって進化してきたわけです。
実際、食欲中枢と性欲中枢は、脳の視床下部というところで隣り合うかたちで存在しています。
これは、「食べること」と「セックスをすること」が同じ水源を持っている証拠のひとつといっていいでしょう。
そして、このふたつの欲求は、同じ水源であるために両方同時に働くわけにはいかず、どちらか一方を優先して働くようになったのです。
すなわち、食欲がふくらんだときは性欲が縮み、性欲がふくらんだときは食欲が縮み、といったように相反して働くようになったのです。
たぶんみなさんも、おなかいっぱいに食べ過ぎると性欲が滅退したり、性欲を抑えていると無性に食べたくなったりすることがあるのではないでしょうか。
著者は、いまの日本人は、水源から流れ出る水のほとんどを食欲のほうに流してしまい、性欲のほうにはほとんど水が流れてこないような状況になっているような気がするのです。
いまはおいしいものがいつでも手に入る飽食の時代です。
テレビをつければグルメ番組、インターネットでは旬のお取り寄せ情報、デパ地下には色とりどりのご馳走がずらりと並び、回転寿司に行けば選り取り見取りのネタが回っています。
わたしたちの生活の至るところに食欲が満ちあふれています。
わたしたちは、そういったあふれかえるような食欲にあまりに多くのものを持っていかれてまい、いつの間にか性欲を小さく縮ませてしまったのではないでしょうか。
それに、先にも述べたように、わたしたちの脳は食欲をふくらませるようにできています。
脳は欲張り者ですから、状況さえ許せば来る日も来る日もおなかいっぱいに食べて食欲を満足させようとします。
放っておけば、すっかり性欲を置き去りにして、食べることに邁進(まんしん)してしまうかもしれません。
なお、こういった食欲のリミッターが解除されたような状態で、あおりを受けるのが腸です。
食べ物が次から次へと入ってくれば、腸はあまりの仕事の多さに疲れてしまいますし、そういう仕事が毎日のように続けば、日々の疲労が積み重なってだんだん機能を落としていってしまうようになります。
腸内細菌には、テストステロンやエストロゲンなどの性ホルモンの前駆体をつくる働きがあります。
よく知られるように、これらの性ホルモンは異性を惹きつけるように作用し、生殖活動をスムーズに遂行するために大きな役割を果たしている物質です。
とりわけ、テストステロンは男たちの性欲をかき立ててセックス願望や妄想をふくらませ、アツい競争心や、バイタリティーをもたらします。
しかしながら、腸の力が衰えていては、こうした性ホルモンもあまりつくられません。
性ホルモンの生産が低下してくると、生殖活動へのモチベーションはガタ落ちとなります。
男性の場合、テストステロンの生産が落ちてくると、性欲が減退し、元気や覇気がなくなってきて、「セックス?うーん……めんどうだし、もうどうでもいいや」という感じになっていってしまうでしょう。
そういう人、みなさんの周りにもいませんか?
何に対しても意欲が感じられない草食系男子、いつも疲れた顔をして覇気のないサラリーマン、性的なエネルギーがほとんど感じられないような男たち・・・。
つまり、わたしは、たらふく食べる生活が腸を疲れさせてしまい、性ホルモンの生産が低下したことによって、性的なエネルギーが落ちてきたのではないかと思います。
著者は、腸を元気にすることが、性欲を甦らせることにつながると考えています。
食欲をセープし、毎食腹八分目を心がけ、腸内細菌がよろこぶ食べ物を摂って、腸が健やかに働けるような環境を整えていく。
そうすれば、もともと腸に搭載されていた「原初的な性欲」が目覚めてくるのではないでしょうか。
男たちは雄々しい性欲を取り戻し、女たちもそれをたおやかに受け止めなくてはなりません。
みなさん、そういった活力を得るためにも腸を元気にしていきましょう。
そして、食欲ばかりに流れていた水源の水を、性欲のほうへ注ぎ込んでいきましょう。
↓ 参考書籍
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