大事な人とけんかをしても、仲が壊れない秘訣

心理・思考・時間


佐藤さん
佐藤さん

「ラポール」とは、心理学の用語で、主にセラピストとクライエントの相互の信頼関係のことで、フランス語で「橋を架ける」という意味から、心が通じ合い、互いに信頼しあい、相手を受け入れていることを表します。カウンセリングをするうえで、最も重要な、コミュニケーションスキルの1つです。最近ではカウンセリングなどにとどまらず、ビジネス、家庭などの人間関係構築・改善のために用いられることもよくあります。


人間関係においてラポールはとても大切だ。


パートナーとの間にラポールが築かれると、僕たちはただそれだけの理由から、お互いのことをもっと好きになる。


「人は自分と似た人に親近感を覚える」という法則が当てはまる。


ラポールは相手の身体言語、たとえば姿勢やしぐさ、身振り、呼吸のリズムなどに同調することで生み出される。


だがパートナーと意見が対立すると、多くの人は本能的にラポールを切ってしまう。


これはまったく自然なことだ。


意見が異なれば、身体の状態も同じではいられないからだ。


そして、ここにこそパートナーとの関係を改善するヒントが隠れている。


たとえあなたがパートナーと激しく言い争っていたとしても、身体言語を相手と同調させ続ければ、ラポールは無意識下で保たれるのだ!


すると対立はあくまで内容レベルのものとなり、感情レベルのラポールは損なわれない。


言葉ではけんかしているが、身体は同調しているからだ。


これは(一時的でなく長い目で見ても)大きな違いとなるだろう。


ラポールさえ保たれていれば、パートナーと意見が違うことはそう大した問題ではなくなる。


むしろ、意見が違ってもはっきりと自分の考えを主張できるようになるだろう。


ラポールはロから出る言葉ではなく、身体を通じて形成されるのだから。



さらに、ラポールにはもう一つ別の効果がある。


相手と同じ姿勢をとると、その人の感じている世界に自分も入り込めるのだ。


これは別に新しい発見ではない。


1844年にはアメリカの作家エドガー・アラン・ポーが探偵小説『盗まれた手紙』の中でこう書いている。


「ある人が賢いか馬鹿者か、善人か悪人かを知りたいときは、できるだけ正確にその人と同じ表情をしてみるのです。あとは、その表情につり合うような考えや感覚が自分の心に浮かんでくるのをただ待てばいい」。


ということは、たとえ数分前までは「そんなの絶対にありえなどと思っていた主張も、身体を同調させることで相手の視点に立って理解できるということだ。


そして相手を理解することこそが、けんかを平和的に解決する第一歩となる。




ここで、パートナーと二人でできるトレーニングを一つご紹介しよう。


まずパートナーと向き合って座り、二人の間で意見が一致しているテーマについて語り合ってほしい。


ただし、このとき意識して相手の身体言語に同調しないようにする。


これを数分間続けて、どんなことが起こるか見てみよう。


パートナーとあなた自身をよく観察し、今自分がどんな気持ちかを確認すること。


次に話題を変えて、お互いの意見が違うテーマについて話し合う。


それとともに今度は相手の身体言語に同調してみよう。


呼吸やしぐさなどに気を配ること。


これによって無意識のうちにラポールが築かれる。


さあ、今度はどんな気持ちになっただろうか?




【反対ばかりする人に、イエスと言わせる裏ワザ】


ところで世の中には、他人の言うことに、いつも難癖をつけたがるタイプの人間もいる。


思春期ならまだしも、大人になってもそうした行動から卒業できないのだ。


こちらの意見に反対ばかりしてくる人とラポールを築くには、どうすればいいだろう?


じつはこれは、そう難しいことではない。


ここでもやはり、最初のステップは相手の身体言語に同調することだ。


これであなたとその人は非言語レベルでは一体となる。

だが、さらによい方法がある。


それは、「けれど」という言葉を巧みに使うことだ。


たとえば「あなたはそうは思わないだろうけれど」と言ってから、自分の意見を言うのだ。


「あなたはそうは思わないだろうけれど、この料理、おいしいわね」


「あなたはそうは思わないだろうけれど、この映画はおもしろいって話だよ」


「あなたはそうは思わないだろうけれど、どこかに出かけるのもいいかも」


こんなふうに「けれど」のあとには、あなたの意見や望みを入れる。


相手はいつも人の言うことに反対しているから、ここでも普段のパターンどおり「いやいや、そう思ってるよ!」とあなたの言葉を否定するだろう。


その結果、あなたが本当に言いたかったことに同意してしまうのだ。

↓ 参考書籍

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