【人間に潜む不思議な力】
誰もが臆するような困難に直面してもくじけない人、「レジリエンス(再起力)」。
レジリエンスは、もともと備わっている人よりもそうでない人の方が、よりレジリエンスを強化しやすいと主張する心理学者もいます。
レジリエンスの高い人は3つの能力を宿しているという共通点があると考えられています。
①現実をしっかり受け止める力。
②「人生には何らかの意味がある」という強い価値観によって支えられた、確固たる信念。
③超人的な即興力。
これらの能力が1つ、2つあれば困難を乗り切れるでしょうが、本当のレジリエンスがあるという意味では、これら3つの要素がすべて必要になります。
また、レジリエンスの高い組織において考えた場合でも、同様のことがいえます。
【現実を直視するために必要なこと】
レジリエンスは楽観的な性格ゆえのものと考えられがちですが、楽観的な性格が現実を見る目を歪めない限り、それは間違ってはいけません。
しかし、裏目に出してしまうと、バラ色の考えも悲劇を招く可能性すらあります。
自問自答してみよう。
「私は本当に現実を理解し、受け入れているのか。また自分の組織はどうなのか」と。
これは大変有意義な質問で、大方の人がそんなことは当たり前だとして、目をそむけているからである。
現実を直視し、それに向き合うのはまったくもって難しい。
実際に不愉快で、しばしば苦痛を伴う。
現実から目を背けず、現実を直視した時、私たちは異常ともいえる困難に耐え、生き延びようと準備をします。
その結果、生き延びる術が身につくのです。
【困難な状況でも、前向きな「意味」を見出す】
現実を直視する能力は、レジリエンスに関する二つ目の能力とも深く関係しています。
それは、大事に遭遇した時でも何らかの「意味」を見出せる気質である。
差し迫った状況に直面すると「何でこんなことが自分に降りかかってきたのだろう」と嘆き、諦めてしまう人がいます。
自分自身を被害者と考えてしまう人々であり、困難に直面しても何も学ばない人たちである。
しかし、レジリエンスの高い人は、自分自身や他者にとっての意味を見つけ、困難な状況を概念化しようとします。
置かれた環境から意味を見出すことが、レジリエンスの重要な側面であります。
当然ながら、成功した組織や人々の多くが強い価値体系を持っています。
強い価値観は、出来事を解釈し、これを概念化するうえでの指針となり、それゆえ環境には何らかの意味が与えられている。
最近では価値観を軽んじている傾向があります。
世界中でも最も再起力が高い組織がカトリック教会です。
カトリック教会は不変の価値観に強く支えられ、2000年以上にわたって、戦争や汚職、分裂を乗り越えて生き残ってきた組織です。
永続するビジネスを見ても、そこには信条があり、それが単に金を儲ける以上の目的となっています。
「信条」「価値」「高潔なる目的」といった宗教色の強い言葉を、現実の価値と混同すべきではなく、倫理的に問題のある価値観を持った企業でも、レジリエンスを備えていることがあります。
組織についてまとめるならば、レジリエンスの高い従業員の存在より、価値観のほうが重要であり、レジリエンスの高い従業員がさまざまな方法から現実を理解すると、自らの決断や行動は現実とは矛盾することとなり、かえって組織の存続を危うくします。
また組織の弱体化が明らかになると、きわめてレジリエンスの高い個人は、自らの生き残りを危うくするくらいならば組織を見捨てます。
【手近なものを即興で間に合わせる「ブリコラージュ」の能力】
レジリエンスに関わる三つ目の能力は、手近にあるもので間に合わせる能力です。
フランスの人類学者のクロード・レビィ・ストロースの教えに従い、心理学者はこのスキルを「ブリコラージュ」と呼んでいます。
その語源には文字通り「すぐに回復する」という意味があり、レジリエンスの概念と密接に関係しています。
ブリコラージュの能力を備えた人は、ガラクタを修繕するのが得意です。
家財道具からラジオを組み立てて見たり、車を直したりします。
本来の使用方法にはとらわれず、ある物で何とか間に合わせようと、いろいろな使い道を試行します。
レジリエンスの高い組織には、ブリコラージュの力を備えた人が多い。
壊滅的な打撃を受けても機能し続けるという、即興力による回復。
混乱に巻き込まれようとも、組織が正常に機能し続けることで、人々はそこから「目的」と「意味」を感じ取ることができる。
レジリエンス(再起力)とは、人々の精神と魂に深く刻み込まれた反射的能力であり、世界と向き合い、理解する能力です。
レジリエンスの高い人や企業は、現実に目を向け、困難な状況を悲観することなく、前向きな意味を見出し、啓示を得たかのように解決策を生み出していきます。
レジリエンスは模倣することはできません。
これが解明するのが難しい「レジリエンス」の本質です。
↓ 参考書籍
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