【不幸な感覚】 人間はつねに「いま」がいちばん不幸に感じる

心理・思考・時間

人は幸せでうまくいっているときでも、不幸や不安を感じることがわかっています。

私(著者)自身、いま、仕事はとても順調ですが、それでも不安は感じます。

どんどん新しいことをやっていかないと仕事に飽きてしまうかもしれないとか、成長できずに立ちどまったらおしまいだとか、やはり考えるものです。

これはなぜかというと、そう考えるシステムが人間の脳に刻み込まれているからです。

私たちは、不安を感じ、危ないと思うからこそ、次を考えて準備をし、分析することで前に進んでいけるのです。

つまり、人間は不幸や不安を感じやすくできているのです。

とても幸せで充実しており、仕事もうまくいっていて不満もなく、いい家族にも恵まれ、友達もたくさんいるという状況にもかかわらず、なんだか悶々として不安を感じたり、幸せの絶頂といえるほど充実しているのに、突然、不幸を感じてみずから幸せを手放すような行動に出たりする人がいます。

不思議に思えますが、じつは、普通のことなのです。

私はこんなに幸せであってはいけない、分不相応だと感じて不安になる・・・これが普通なのです。

つまり、人間というのは、「いま」がいちばん不幸や不安を感じるように適応してきたのではないか、とアメリカのノックス大学の心理学者フランク・マクアンドリュー博士は述べています。


たとえば、産業革命以前の時代は、今日を生きるために一生懸命働かなくてはなりませんでした。

その後、機械化や自動化が進むと、これからは人間が働く時間を減らすことができるだろうと、みんなバラ色の未来を想像しました。

でも、人間はいっこうに幸せにはなっていないし、いまでもみんな変わらず働いています。

AI(人工知能)やIT、自動化などが進んでいるにもかかわらず、ほとんどの人の労働時間は変わっていないし、自由な時間も増えていません。

なぜでしょうか。

マクアンドリュー博士は、人間がいっこうに幸せにならない理由について調べた結果、さまざまな科学的根拠をもとに、人間には、そもそも幸せを感じにくくさせるような、幸せになりそうだとそれをどめるような心理的なプログラムがあるのではないかという説を唱えています。

自分はいま幸せで、このままずっとやっていけるとなったら、私たちは努力も注意もしなくなります。

だから、幸せを感じると、それに水を差す心理が働くのではないかということです。

そうした心理作用によって、このままの状態が続くことはないとか、うまくいくわけがないといった悪魔のささやきが起こるわけですが、そのおかげで私たちは生き残ってきたのです。

不安を感じにくい人たちは、失敗したり裏切られたりして子孫を残すことができず、調子がいいときでも不安を感じやすい人たちが生き残ってきたのだといえます。

つまり、私たちはもともと、幸せなときにわざと不幸を感じるようにできているということです。

ですから、不幸や不安を感じるのは悪いことではなく、そういう性質があることを理解したうえで、いま自分が感じている目の前の幸せを楽しむことが重要なのです。


【やりがいを感じて幸福度を上げる四つのポイント】

やりたいことはあるのに思うようにできないとか、やりがいや生きがいを感じない・・・そんな悶々とした人生から抜け出し、目標に向かって前進し、生きている意味を感じられるようになるためのポイントを、幸福学の見地をもとに紹介しましょう。

人間は、やりがいを感じられないと幸福度が下がります。

お金があれば不幸を減らすことはできますが、幸福度を上げることはできません。

では、幸福度を上げるためにはどうすればいいのでしょうか。

次の四つのポイントを押さえると、かなり効果があると思います。


・強みを活かして成長できているか。

これは、『幸せのメカニズム実践・幸福学入門』(前野隆司著、講談社現代新書)でも紹介されていますが、幸福の第一因子といわれるものです。


自分の強みが何なのかがわかっている、これは人よりうまいなどとほめられる、自分はこれをしているときは生きている感じがする、といったことを活かして、自分が前に進んだり成長したりできている感覚があるかどうかです。

次のようなことを自分自身に問いかけ、メタ認知の観点で、自分がなりたい自分になれているかを、客観的にチェックしてみましょう。

・自分の強みを活かすことができているか。

・社会の役に立つことができているか。

・誰かの役に立つことができているか。

・自分が成長している実感があるか。

・それは自分が何をしているときに感じるか。

・なりたい自分になれているか。

自分の強みは、自分ではなかなか気づけないものですから、家族や友達に聞いてみるのもいい方法です。


・自分が感謝できる人、自分に感謝してくれる人と、しっかりつながっているか。

感謝できる相手、自分を助けてくれる人がいるという感覚と、自分に感謝し、自分の助けを待っている人がいるという感覚が、人とのつながりをもたらしてくれます。

友達はたくさんいるのに幸せを感じられない人は、この感覚が足りないのかもじれません。

次の点を確認して、安定した人間関係を築けているか、きちんとつながっているかをチェックしてみましょう。

・誰かを喜ばせることができているか。

・自分を大事にしてくれる人がいるか。

・人に感謝できているか。

・人に親切にできているか。

友人が多いことは幸福度とはあまり関係がなく、数よりも友人のバリエーションのほうが重要だということがわかっています。

職種・年齢・性別など、さまざまなバリエーションの友人がいるほうが幸福度は高くなるのです。

ちなみに、心理学では感謝の研究がとても進んでいて、感謝すると免疫力が上がり、血圧が下がり、ポジティブな感情が強くなって、死亡率まで下がることがわかっています。


・がんばればある程度なんとかなる、と思えるか。

将来の夢でも目の前の問題でも、100パーセントとまではいかなくても、がんばればなんとかなると思えることが重要です。

いわゆる楽観主義に近いですが、どんなことでも、自分ががんばれば7、8割くらいはなんとかなると思う、失敗したり悩んだりしても、それをずっと引きずらず、友達や家族と喧嘩することはあっても、お互いがんばればなんとかなる、という感覚をもてるかどうかが大事だということです。

くれぐれも、完璧を求めないようにしてください。


・他人と比べずマイペースを保てているか。

自分を他人と比べると、どうしてもマイペースを保てなくなります。

あの人のほうがお金をもっている、あの人のほうがいい車に乗っている、あの人のほうがいい服を着ているなど、他人と比べないようにして生きることが大事です。

自分の失敗やうまくいかない理由を他人や環境のせいにせず、自分の努力が足りないのはどこまでで、自分が改善できるのはどこなのかを考え、自分事にしていきましょう。

人目を気にせずに物事を楽しめるか、言いたいことを言えるかが幸福度を左右します。

私たちは、幸せになるために生きています。

お金がないと生きていけないのでがんばって仕事をしなければなりませんが、ある程度お金ができたり、自分の強みや好きなことで評価されたりするようになったら、周囲に迎合せずに、自由に生きればいいのです。

迎合してばかりいると、ある日、自分にとっての幸せが何なのかわからなくなります。

人間は幸せになれるはずなのに、どうしても錯覚やバイアスが影響をおよぼします。

ここで紹介した幸せのポイントを意識し、悶々とした人生を突破してもらいたいと思います。

↓ 参考書籍

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