ワーキングメモリを使いこなし、鍛える方法

心理・思考・時間


【脳の作業領域がミスの鍵を握る】

ワーキングメモリとは、いわば「脳の作業領域」です。


イメージ的には理解できたと思いますが、「ワーキングメモリの低下」はミスの原因のひとつでもあるので、もう少し説明していきます。

たとえば、朝、通勤途中でコンビニに寄ったとします。

左手のコンビニはレジが2台態勢でそれぞれのレジに5,6人の行列ができています。

右手のコンビニはレジ4台態勢でほとんど列はありません。

あなたはどちらのコンビニに入りますか?

朝の急いでいるいる時間帯ですから、レジ4台態勢の明らかに回転率がいいコンビニに入ると思います。

列に並んだお客さんの精算をして、次々とさばいていく。

まさに、このコンビニのレジこそが、ワーキングメモリと考えていいでしょう。

脳に入ってきた情報を、要領よく処理する場所がワーキングメモリですから、コンビニにおけるレジに相当するわけです。

コンビニにレジが少ないと、明らかに時間はかかるし、処理できる情報も少なくなる。レジ打ちの店員さんも、いっぱいいっぱいになって接客も手薄になり、打ち間違いなどのミスを起こす可能性もあるでしょう。

ワーキングメモリの容量が多いほど、情報は速く、的確に処理されます。

コンビニで稼働しているレジが多いほど、お客さんの流れがスムーズであるように、ワーキングメモリも多いほど、情報処理のスピードが速くなり、仕事をスピーディーにこなせます。

その結果、仕事の流れも速くなり、ミスも少なくなります。

脳内で情報を最初に迎える入り口でもあるワーキングメモリがいっぱいになると、インプット・ミスが起きるのです。

「ど忘れ」といったインプット・ミスを防止するための最も重要な対策が、ワーキングメモリを高めることなのです。


【ワーキングメモリのキャパシティ】

私たちのワーキングメモリのキャパシティはどのくらいあるのでしょう?

コンビニでいうと「レジ」は何台稼働しているのでしょう?

ひと昔前は「マジカルナンバー7」ということが言われていて、「7」という数字が注目を集めていました。

電話番号のような、数字の羅列を記憶する場合、7桁か8桁までは覚えられるものの、それを超えると、記憶があいまいになると思います。

ワーキングメモリの容量は、実験をするときの課題の負荷のかけ方によって変化するもので、「物品の名称」を記憶する場合などのように、脳への負荷が大きくなると、私たちの記憶できる量は、7よりかは少なくなります。

最近の研究では、ワーキングメモリのキャパシティは「3」前後、と言われています。

「3」まではほとんどの人が確実に記憶できますが、「5」を超えると途端に記憶が怪しくなり、頭が真っ白なる人も出てきます。

電話番号も、〇〇〇ー✖✖✖✖ー▢▢▢▢のように11桁を記憶しているようで、「 〇〇〇 」「 ✖✖✖✖ 」「 ▢▢▢▢ 」のように、3つのチャック(かたまり)ごとに記憶しています。私たちは、このように無意識のうちに、実は「3」というワーキングメモリを使って記憶しているのです。

研究者の間でもいくつか説があり、また人によって個人差もあるものの、ワーキングメモリのキャパシティは「3」というのは、とても説得力があるように感じます。


普段は「3台」態勢でも、脳疲労の状態になると「2台」態勢に減ってしまいます。「うつ病」の状態では「1台」態勢となるので考えがまわらず、堂々めぐりばかりするようになるのです。

わかりやすく整理すると、絶好調→4台、健康→3台、脳疲労→2台、うつ病→1台。

こんなイメージです。

あなたが、今、健康な状態、つまり3台態勢であるならば、4台態勢にして、仕事効率をアップさせるべきです。

あなたが今、もしも脳疲労の2台態勢の状態であるならば、疲労回復して「健康」状態の3台態勢にもっていくべきです。

【ワーキングメモリを鍛える9つの方法 】

ワーキングメモリを鍛える方法は、いろいろとありますが、それらの中でも科学的根拠に基づいた実践法を厳選して、9つのメソットをお伝えします。

【睡眠】

まず、自分が持っているワーキングメモリが100%の力を発揮するためには、必要な睡眠時間(7時間以上)がきちんととれていることが必須です。

医師を対象にした研究によると、睡眠不足の医師は、十分な睡眠をとった医師と比べて、業務を完了させるのに14%長く時間がかかり、ミスをする確率は20%以上高かった、という結果が出ています。

睡眠が不足すると、ワーキングメモリ、そして注意力・集中力、記憶力、学習機能、実行機能など、多くの認知機能が低下してしまい、極めてミスを起こしやすい状態に陥ります。

そうした、認知機能の低下は、睡眠時間が6時間を切っただけで現れるといいますから、注意が必要です。

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佐藤さん

私の場合は、朝一番にブログ記事の制作にあてています。朝は脳がスッキリしていて「雑念」みたいのがなく、ブログに集中できるからです。ちなみに「音」もなしです、人それぞれですが私の場合は「ブログオンリー」にしています。

【運動】

運動は、ワーキングメモリを強化します。

ワーキングメモリに限らず、注意力、集中力、記憶力、学習機能など、多くの脳の働きを活性化し、認知症を予防します。

つまり、運動は「最強の脳トレ」と言ってもいいでしょう。

脳のパフォーマンスが上がる運動は、筋トレではなく、有酸素運動です。

なかでもランニングや、やや早足のウォーキングなどがおすすめです。

脳を活性化するには、週に2時間以上の有酸素運動が推奨されています。

ワーキングメモリについての研究では、たった30分のランニングで、ランニング直後にワーキングメモリが向上しているという報告もありますから、運動はとても即効性のある方法といえます。

もちろん、何時間かすると元に戻りますが、有酸素運動によって脳の神経を育てるBDNF(脳由来神経栄養因子)が分泌され、脳のネットワークを強化されますので、継続的なワーキングメモリの基礎力を高めてくれます。

佐藤さん

何かに集中していても、何もかも忘れて没頭することはできなく「疲れ」てしまいます。ブログだったら椅子に座って腰が痛いし、目もシパシパしてきます。そんな時に私は「筋トレ」します。気分転換みたいな感じなんですが、日課でもあるので時間を無駄にしないように工夫しています。

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【自然に親しむ】

「運動をする場合、どういうものがいいのか?」という質問はよくありますが、最新の研究では「木登りなど自然の中で運動する」「自然の中をランニングする」「山道を走るトレイルランニングをする」などが、ワーキングメモリを高める効果や、脳を活性化する効果が高いと注目されています。

自然の中を走れば、石ころがあるかもしれないし、木が倒れているかもしれない。

そうした「危険を」を素早く察知して、飛び越えたり避けたりするという判断や行動を瞬時に行わなければならないことを意味します。

このように考えたり、判断したりしながら運動することが、脳のさらなる活性化につながるのです。

あなたがランニングをする場合、同じ舗装された道を走る場合でも、自然豊かな道や、緑豊かなコースを選ぶことで、脳をより活性化させる効果が期待されます。

また、ランキングでなくても、自然の中を歩いたり、散歩したりするだけでも、脳を活性化させる効果やストレス発散効果、リラックス効果などが得られることがわかっています。

自然の中にいるだけで脳のトレーニングになるのですから、是非、自然と親しむ時間を増やしてほしいと思います。

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佐藤さん

朝一番にブログを書いて、出勤前に「朝散歩」しています。出来ない日もありますが、なるべく散歩するようにしています。樺沢先生の書籍に何度も出てきます。ただ、それを忠実に行っています。

【読書】

ワーキングメモリの容量が多い人は「高い読書力」を有し、文章全体を把握する「文脈をとらえる能力」に長けていることがわかりました。

この研究から、実際にワーキングメモリと読解力は相関関係にあり、読書をして読解力が鍛えられれば、ワーキングメモリの鍛錬にもなる、ということが明らかになったのです。

読書をしている ← 過去投稿

佐藤さん

読書家の人に比べたら、私はまだまだですが時間を見つけて読書しています。読書は最強のコスパのいい自己投資です。まずは興味のあるものから、広げていって、その後深く読んでみると面白いです。


【記憶力を使う】

何かを記憶したり、暗記したりする場合、否応なく、ワーキングメモリが使われます。

ですから何かを意識的に暗記する、「記憶力」を使うことが、そのままワーキングメモリのトレーニングになります。

英語を勉強している社会人はとても多いと思いますが、たくさんの新しい単語を暗記しなくてはいけない「外国語の習得」は、格好のワーキングメモリのトレーニングと言えるでしょう。

しかしながら、社会人の場合、最近はスマホで検索すれば何でも瞬時に調べることができますから、「記憶力」を使う機会が、ものすごく減っていると言えます。

ですから、自分から積極的に資格試験や昇進試験、あるいは趣味の「検定」を受験するということも重要です。大人になっても勉強は続けていかなくてはいけません。

【暗算】

16+59の答えは何でしょう。暗算で計算してください・・・

1の位は「15」で「1」が10の位に繰り越される。10の位は「6」なので、6+1で7。「75」と答えということになります。この計算の過程で、いくつかの数字が脳のスペースに、「仮置き」されていないと計算することはできません。

この数字が「仮置き」されている場所がワーキングメモリですから、暗算によってワーキングメモリが鍛えられます。

しかしながら、最近のスマホには「電卓」という便利な機能がついています。

昔ながらの暗算ではなく、電卓に頼りたくなります。

できるだけ電卓に頼らず、暗算でできるものは暗算するようにしないと、脳の老化はどんどん進んでいく危険性があります。

【ボードゲーム】

チェス、将棋、囲碁などのボードゲームは、認知トレーニングとして非常に有効であることが知られています。

ワーキングメモリのトレーニング効果もありますし、認知症予防にも効果があるという研究もあります。

将棋をする場合、1手先、あるいは2,3手先を読むことが必要になります。

「この手の次は、相手をこの手を打つだろう」というシミュレーションを頭の中の「将棋盤」で行っているはずですが、その過程でワーキングメモリが使われます。

将棋やチェスなどは、高い集中力を必要とされますので、集中力のトレーニングにもなります。

【料理】

パスタをゆでながら、やさいの皮をむいて、みじん切りにする。

次にフライパンを加熱してソースを準備する。

というように料理は、複数の作業を同時進行でこなしていく必要があります。

次はこれ、その次はこれということで、複雑なプロセスを火加減など同時に把握して、火を止めるタイミングなども判断しないといけません。

ワーキングメモリがフル稼働で使われます。

料理をすることでワーキングメモリは鍛えられますが、料理のレシピを頭に入れておいて料理中はレシピを見ないで料理すると、より脳のトレーニングになると言います。

「最近、料理が出来なくなった」「鍋を焦がすことが多くなった」「最近、料理の味付けがおかしくなった」といった行動から、認知症が発見される場合もあります。

料理は簡単そうで、複雑な「段取り」作業ですから、料理自体が脳のトレーニングになるのです。

認知症のデイケア施設でも、「料理」は作業療法の最もポピュラーなメニューの1つとなっています。

脳トレという意味だけでなく、料理は楽しいし、夫婦や家族で一緒にやればコミュニケーションがとれるだけでなく、ストレス発散にもなるので。お勧めです。

佐藤さん

「料理」はできます。昔、お金がない時に「自炊」を十数年やってました。料理は面白いです。ただ作るのではなく、段取りを決めたり、味付けを工夫したり、様々な事が学べてよかったです。

【マインドフルネス】

あのGoogleが社内研修に取り入れたことで、注目を集めているマインドフルネス。

マインドフルネスとは、「今、この瞬間」の自分の体験に注意を向けて、現実をあるがままに受け入れること。ストレス対処法の1つとして医療、ビジネス、教育などの現場で実践されています。

マインドフルネスについては、ストレスホルモンを抑制する効果や、前頭葉を活性化させる効果、そして、脳内物質・セロトニンを活性化させる効果なども報告されています。

セロトニン的幸福とは・・・ ← 過去投稿

佐藤さん

最近になって「今、ここ」を意識できるようになった気がします。ひとつのタスクをクリアして、また次のタスク・・・ひとつずつこなしていくと達成感も感じますから、仕事や自己投資に必須だと思います。

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