地中海食で特徴的な食材で真っ先に浮かぶものと言えば、エクストラバージン・オリーブオイルや青魚、全粒粉の穀物などかもしれません。
しかし、私が注目しているのは「ナッツ(木の実)」です。
2016年に発表された地中海食に関する調査研究では、ウォールナッツ、アーモンド、ヘーゼルナッツ等のナッツ摂取を含む地中海風の食生活が、肥満や太り気味の人の体重やウエスト周りの改善に効果的という結果が得られています。
そもそもナッツがダイエット食品であることをご存じない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
【なぜ太らない、ナッツの不思議】
ナッツがダイエット食品として見過ごされやすい理由に、カロリーの高さがあります。代表的なナッツの100グラムあたりのカロリーは以下の通りです。
・カシューナッツ 553キロカロリー
・ピスタチオ 560キロカロリー
・アーモンド 579キロカロリー
・ヘーゼルナッツ 628キロカロリー
・ウォールナッツ 654キロカロリー
・ピーカン 691キロカロリー
・マカダミアナッツ 718キロカロリー
・(ピーナッツ 673キロカロリー)
なお、ピーナッツだけカッコになっているのは、ピーナッツは厳密にはナッツ(木の実)ではないからですが、ナッツと同じような健康増進効果があるので記載しています。
※落花生はマメ科の植物で「nuts(木の実)のようなpea(豆)なのでピーナッツと言います)
「ナッツ100グラム」というと両手ですくったくらいの量ですから、それで500~700キロカロリーに相当するというとダイエット中の人は「うわぁ!」と思うでしょう。
でも、キロカロリー高いからといって、太りやすいというわけではないのです。
ナッツの標準的な成分は、次の通りです。
【ナッツの主成分】
・脂肪 43~67%
・タンパク質 8~22%
・糖分 0.6~4%
・ポリフェノール 0.2~4%
・カロテノイドやフィトステロールなどのファイトケミカル
・ビタミン、ミネラル(マグネシウム、葉酸、カリウムなど)
・食物繊維
・一価不飽和脂肪酸(オレイン酸がメイン)
・多価不飽和脂肪酸(マカデミアナッツを除き、リノレン酸がメイン)
・飽和脂肪酸(概して少量)
ポイントは不飽和脂肪酸(オレイン酸やリノレン酸)が含まれることです。
不飽和脂肪酸とは植物や魚の脂に多く含まれるもので、肉の脂に代表される動物性脂肪(飽和脂肪酸)とは別もの。
ちなみにオリーブオイルも一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)を効率よく摂取する最高の食材です。
【痩せるだけじゃない!ナッツがもたらす驚きの健康効果】
ナッツを食べ続けることによって期待できる効用は、非常にたくさんあります。
・痩せる
ナッツのダイエット(体重減少)効果に着目した調査研究は増えていて、いまや相当数のエビデンス(科学的根拠)があります。
体重減少につながるメカニズムはいろいろありますが、代表的なものをご紹介いたします。
・食欲が抑制される。
噛みごたえも関与していると考えられていますが、もうひとうの要因は、先ほど説明した「不飽和脂肪酸」です。
この不飽和脂肪酸が食欲を抑制する「グルカゴン様ペプチドー1(GLPー1)」と「コレシストキニン」というホルモンの分泌を促すと考えられています。
・エネルギー消費が促進される。
ナッツに含まれる植物性タンパク質うやオレイン酸は「熱産生促進」効果があることで知られています。
エネルギーがどんどん作られるために、余分な栄養が体内に溜まりにくいのです。
・食物繊維のさまざまな作用が働く。
長年にわたって食物繊維は「食感が悪く、エネルギーにもならず、他の栄養素の吸収の妨げになる」として、お通じに効くという効果以外では軽視されてきた栄養素でした。
次第に健康効果が注目されるようになり、いまでは5大栄養素(タンパク質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラル)につぐ、「第6の栄養素」として位置づけられています。
ナッツは食物繊維を豊富に含んでおり、これが「消化管通過時間の遅延」や「空腹感の抑制(摂食量の低下)」といった腹持ち効果や、さらに「余分な栄養分の吸収抑制」といった作用を発揮してダイエット効果が高めると考えられています。
・血糖値の改善
ナッツは血糖値の改善にも効果的です。
不飽和脂肪酸、ポリフェノール、食物繊維による過剰な栄養の吸収抑制などの効果と考えられています。
・悪玉(LDL)コレステロール値の改善
ナッツを食べることでコレステロールの吸収の抑制、コレステロール合成に必要なHMGーCOA還元酵素の阻害、コレステロールを消費する胆汁産生の増加といった変化が起き、LDLコレステロール値が改善されます。
・中和脂肪値の改善
ナッツに含まれる成分による余分な栄養分の吸収抑制や体重減少、糖代謝改善効果などが複合的に関与し、中性脂肪値が改善されます。
・血圧の改善
ピスタチオやミックスナッツに血圧改善効果が認められています。
成分に含まれるポリフェノールなどが関与していると考えられています。
このようにナッツは健康食として非常に優れているわけですが、よくよく考えてみれば人間は太古の昔、木の実を主食としていたわけで、「基本に帰る」ということが、人間の健康維持には重要なのかもしれません。
【小腹が空いたらナッツを食べる】
忙しい方は夕食の時間が20時頃になってしまう人もいるのではないでしょうか?
となると昼食から夕食までの長時間、空腹に襲われるでしょう。
空腹の状態でドカ食いするよりも、ちょこちょこ食べる方が血糖値が上がりません。
夕食までの「つなぎ」として「古代人」を見習ってナッツを食べることをお勧めします。
血糖値を上げずにビタミン、ミネラル、タンパク質など理想の栄養分を補給することができます。
おにぎりやサンドイッチ、スナック菓子などはどれも糖質の塊ですから避けた方がいいでしょう。
ちなみに私は ↑ の商品をまとめ買いしています。あると「口寂しい」時についつい口に運んでしまうので、少し「量」を見直さなければなりません。
【科学的に正しい食品 ナッツ&コーヒー】
あれこれと記載しましたが、ナッツはダイエット食品として超優秀で、おやつをナッツに変えるだけで、痩せたという研究結果もあるくらいです。
ちなみにミス・ユニバースに選ばれた人が、本番に挑む準備期間中は、夕方になるとナッツを食べていたと聞いたことがあります。
これは非常に理にかなっていて、ナッツ自体では太りませんし、腹持ちがいいので夜の過食を防ぐこともできます。
もちろん、間食をとらないに越したことはないのですが、どうしても小腹が空いて、おやつの誘惑に負けそうなときは、我慢しすぎないでナッツを食べてはいかがでしょうか。
ナッツといってもたくさんの種類がありますが、特にどの種類が一番効果的だということはないようです。
ちなみに私は無塩ナッツを主として、たまに気分を変えてミックスナッツを食しています。
個人差や好みもありますので、どれかひとつに絞って食べ続けるのではなく、ときどき種類を変えたり、いろいろと試してみることをお勧めします。
余談として【医学的にエビデンスのある飲み物はコーヒー】
ナッツ同様、それまでの先入観とは裏腹に、健康への優れたプラス効果があることがわかっって近年(?)注目を浴びているのが「コーヒー」です。
たとえば、コーヒーを1日3~4杯飲む人の死亡リスクは、まったく飲まない人に比べて24%低いことが、国立がん研究センターの「多目的コホート研究」からわかっています。
さらに米国でも、「1日4杯のコーヒーが死亡リスクを下げる」といった米国保健福祉省のエビデンスがあります。
コーヒーは「眠れなくなる」「胃に悪い」など、体に良くないイメージが強かった時期もありましたが、40万人の13年間の追跡調査により、適量のコーヒーを飲むことで、がん、心臓病、呼吸器系疾患、脳卒中、糖尿病といったさまざまな病気による死亡リスクを低下させる可能性があることがわかっています。
これはコーヒー豆に含まれるクロロゲン酸なファイトケミカル(抗酸化作用のある植物由来の化学成分)が関係しているといわれていて、カフェインが入っていないコーヒーでも同じような効果が出ています。
ぜひ、普段の生活に、ナッツとコーヒーの健康効果をプラスしてみてください。
注意として、カフェインの取りすぎは「 自分を元気にしてくれるはずのコーヒーが、実はストレスの原因になっている 」という研究もありますので、過剰摂取は控えてください。
参考記事 → カフェイン・リセット
参考書籍 ↓
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