【目を閉じる】
簡単に「ひらめきモード」に入るための方法
よいアイデアを生み出す方法としてもっとも手軽なのは、「おもむろに目を閉じる」という方法でしょう。
実は、軽く目を閉じてみるだけでも、あなたの創造性はアップするのです。
ミラノ・ビコッカ大学の実験では、38名の学生に「創造性テストjをやってもらい、そのときの視緑の動きをチェックしました。
「創造性テスト」とは、たとえば「いち(1)、おもり(重り)、きた(北)の共通点は?」
といった「あるなしクイズ」のようなタスクを意味します。
その結果は、次のようなものでした。
・まばたきの数が少なくて視線が動かない参加者ほど、ひらめきが生まれにくかった。
・ばたきの数が多くて視線がよく動く参加者ほど、ひらめきが生まれやすかった。
どうやら人間の視線というものは、分析的な思考が働いているときほど動かなくなり、逆に注意が自分の内面に向くと、まばたきが起こりやすくなるようです。
この現象について研究チームは、「問題を解く段階でまばたきの回数が多くなるほひらめきが生まれる確率も高くなる。おそらくドーパミンの機能が高まるからだろう」と言います。
ご存じの方も多いでしょうが、ドーパミンは集中カアップやモチベーションの維持に欠かせない脳内伝達物質です。
目を閉じると私たちの頭のなかにはドーパミン増え、そのおかげで注意力や認知機能が高まった結果、脳が「ひらめきモード」に入っていくわけです。
みなさんのなかにも、なんとなく白い壁を見つめたり、ぼんやりと外をながめていたらよいアイデアが浮かんだという経験がある人は少なくないでしょう。
これは、一部の刺檄から一時的に意識がそれたおかげで、自己の内側に注意が向き直ったからです。
何かいいアイデアが必要になったときは、ひとまず静かに目を閉じてみましょう。
それだけでもあなたの脳は、「ひらめきモード」に入りやすくなるはずです。
【シャワーを浴びる】
特によいアイデアを生みやすいのは朝のシャワー
ひらめきやアイデアはふとしたときに湧き起こるもの。
たとえばシャワー中に思いもよらないアイデアが浮かんだという経験をおもちの方は多いでしょう。
ほぼ無意識のうちにお湯を浴びるシャワーの間は、一種の瞑想状態に近い精神状態とも言えるからです。
数多くの研究によっても、シャワーは創造性との強い相関が示されています。
これは、シャワーが高いリラックス効果をもつのが原因のひとつで、カウフマン博士による研究では、どんな人口層を調べても、必ず全体の72%がシャワーを浴びている間によいアイデアを思いついた経験をもっていました。
シャワーには、自分の肌と周囲の環境の境目があいまいになったかのような感覚があるため、脳が創造モードに切り替わって「孵化」のプロセスが進みやすくなります。
周囲との境目がなくなったせいで、あたかも周りの空間が広がったような錯覚が生まれて、自然と発想も広がっていきます。
何よりシャワーを浴びるとすっきりして気分転換にもなりますし、手軽にできる方法なので、家でアイデアに煮詰まったら試してみてください。
【いい気分になる曲を聴く】
創造性がアップする音楽とその聴き方
アイデア出しのときに、好きな音楽をかけるという人は多いでしょう。
ミーティング時には必ず音楽をかけることで、会議を活性化させるという会社もあるほどですが、果たして音楽は創造性に効果があるのでしょうか?
実は、近年のデータでは、「音楽で創造性が下がる」という結論が出ています。
たとえば、ランカスター大学などが30人の男女に行った実験を見てみましょう。
これは被験者に「遠隔性連想検査」(先の「あるなしクイズ」に近いテスト)をやってもらいながら、同時に何種類かのBGMを流すというものです。
「遠隔性連想検査」は、「ワーキングメモリの性能がどれだけ高いか?」や「よいアイデアを思いつくことができるか?」を測るために使われる定番のテストで、信頼性には定評があります。
実験では、被験者には19問のクイズに挑んでもらいつつ、BGMのパターンを4パターンにわけました。
1.歌詞がよくわからない曲を流す。
2.みんなが知っている大ヒット曲を流す。
3.歌詞がない曲を流す。
4.無音の状態。
そのうえでクイズ結果を見たところ、どんなタイプのBGMだろうがテストの成績は下がったのです。
創造性が下がらないのは無音のときだけで、創造性を下げる可能性があるのではないかという結論になりました。
この結果について研究チームは、「遠隔性連想検査を解くには脳内で単語をつぶやく必要があるから」だとしています。
ワードクイズを考えるときは、誰しも心のなかで「えーと、この3つに共通するのは・・・」のように言葉で思考しますが、
この作業と音楽がバッティングしてしまい、被験者は音楽の変化に影響を受けやすくなってしまいます。
これに対し、図書館の環境音などは変化が激しくないため、創造性に悪影響を与えにくいのです。
つまり、音楽は情報量が多すぎるせいで、どうしても言語を使う作業とは食い合わせが悪いと考えられます。
この実験を見る限り、現代のポップソングよりは、アンビエントやクラシック音楽のほうが悪影響がなく、結局は無音がベストなのかもしれまん。
ただし、過去には今回の研究とは違う結果も出ており、2017年の実験では「ビバルディの四季のように楽しい曲を聴くと、思考が拡散して創造性が上がる」という傾向も確認されています。
これはラドバウド大学の実験で155人の男女を対象にしたもの。
まずは全員を4つのグループに分け、それぞれ4パターンの感情を引き起こすような音楽を聞いてもらいました。
1.落ち着き ー サン=サーンス『動物の謝肉祭』。
2.幸福 ー ビバルディ『四季』。
3.悲しみ ー サミュエル・バーバー『弦楽のためのアダージ』』。
4.不安 ー ホルスト『火星、戦争をもたらす』。
そのうえで創造性に関するテストを実行し、どの曲を聞いたときにもっともよいアイデアを思いつくかをチェックしたのです。
結果は『四季』の圧勝でした。
『四季』のアップテンポなメロディを聴いたグループは、一様に創造性テストの成績が上がったのです。
この結果について研究チームは、「ポジティブな気分や高揚感をもたらす音楽は、何も聞かない状態にくらべて『拡散思考』をうながしやすいようだ。一方で『収束思考』には特に影響が見られなかった」とコメントしています。
「拡散思考」とはひとつの問題に対して複数の解答を思いつく能力のことで、この思考ができる人ほどよいアイデアも思いつきやすくなります。
もうひとつの「収束思考」は、複数の問題からひとつの解答を導き出す能力のこと。
難しい問題を論理的に解き明かしていくような思考法を意味します。
要するに、なんらかの企画を考えなければいけないときに必要なのは「拡散思考」で、その企画を現実化する段階で必要なのは「収束思考」です。
どちらもビジネスライフには欠かせない思考法ですが、発想法という点では「拡散思考」のほうが大事になります。
クリエイティブな発想を生み出すためには、脳がリラックスモードに入る必要があります。
そう考えると、ポジティブな音楽が脳をリラックスさせ、よいアイデアを産む確率を上げてくれる可能性は高いと言えるでしょう。
ここまでの話をまとめると、音楽で創造性を高めるためには次のようなステップを踏むのがおすすめです。
1.アイデア出しの前に楽しい曲を聴いてリラックスする。
2.思考が拡散したところで無音にしてアイテアを練る。
この使い方であれば、音楽のメリットだけを生かしつつ創造性のアップにつなげることができるでしょう。
【あえて単調な作業をする】
つまらない単純作業のときこそチャンス
シャープペンの芯を入れ替える、棚の本をジャンルごとに分類する、領収書を月別にまとめる。
このような日々何気なくやっている単純作業で、よいアイデアが生まれると言ったら驚かれるでしょうか?
しかし、単純作業によって創造性が高まるのは、実験でも確認されたまぎれもない事実。
カリフォルニア大学が124人の学生を対象に行った実験では、全体を4つのグループに分けて、それぞれに以下のような指示を出しました。
1.暗算のような頭を使うタスクをやるグループ。
2.「紙束を数える」だけの単純作業をやるグループ。
3.12分間の休憩をとるグループ。
4.なんのタスクもせず休憩もしないグループ。
その後、全員に創造性テストを行ったところ、グループ2の単純作業を行った被験者のみ成績がアップしました。
これは、単調な作業のほうがマインドワンダリングが起きやすく、結果としてよいアイデアが出やすいのだと考えられます。
マインドワンダリングとはマインドフルネスの逆の状態を表す用語で、「心ここにあらず」の状態を指します。
というとよくないことのようですが、意図的にマインドワンダリングの状態に入る人ほど脳の前頭前野が発達しており、さらに創造性と集中力に関わる脳のネットワークがスムーズにつながることがわかっているのです。
紙束を数えるような退屈な作業をしていれば、誰でも「今日は何を食べようか」や「明日の予定はなんだっけ?」のように、目の前のタスクとは無関係なことが頭に浮かぶでしょう。
この頭がポンヤリした状態が脳をリラックスさせ、先に紹介した拡散思考の発生率を高めてくれるわけです。
単純作業というと苦痛なイメージがあるかもしれませんが、実際にはよいアイデアを生み出すチャンスでもあります。
今後は、単純作業をするときには「いまからマインドワンダリングに入るぞ」と意識しつつ、思考がさまようままに放置してみましょう。
確実によいアイデアが浮か‘ぴやすくなります。
【デスクに観葉植物を置く】
緑のぺン、緑のカーテンでも効果がある
「オフィスのデスクなどに植物を置く」のも、よいアイデアを生むのに有効です。
植物の効果を示した事例としては、周囲に緑が多い病院に入った患者は病気の治りが早く、窓から緑が見える監獄で暮らす受刑者ほど病気にかかりにくかったというデータがあります。
これは主に心理的な効果によるもので、原始時代の人間は植物に囲まれて暮らしていたため、自然の光景や緑色を見ると安心感をもつように進化したのが原因だと言われています。
植物と創造性の関係を調べた研究もあり、テキサスA&M大学の実験では、オフィスに観葉植物を置いただけで、よいアイデアを思いつく確率が15%もアップ、難しい問題にも柔軟に取り組めるようになったそうです。
観葉植物の効果を調べた研究はほかにも多く、次のような報告が出ています。
・オフィスに観葉植物を置いたら、従業員の疲労・ストレス・頭痛・咳・肌の乾燥が改善した。
・オフィスに観葉植物を置くほど、従業員が病気にかかる確率が減った。
想像以上に観葉植物のメリットは大きいことがわかると思います。
と言っても、身の回りに置くべきものは植物だけに限りません。
緑のペンを使ったり、緑のカーテンを部屋にあしらうだけでも創造性は上がるとのデータも少なくないからです。
これだけ簡単なテクニックなら、使わない手はありません。
さらに手軽に自然の効果を取り入れたい方は、PCの壁紙を森や庭の写真に変えてみるだけでもOK。
観葉植物は枯らせてしまうという人も、これなら心配無用ですね。
ぜひいますぐ取り入れてみてください。
【とにかく新しいものに触れる】
好奇心と脳内のドーバミンの効果
創造性アップのために、単に「新しい体験」を心がけるのも有効です。
スポーツでもダンスでも料理でもいいので、まずはトライアルのレッスンに出てみる、気になる役者が出ている舞台を観に行く、または人にオススメを聞いてふだん手に取らないような本を読んでみるなど、いままであなたが試したことのない体験であればなんでもかまいません。
認知心理学者のスコット・バリー・カウフマンは、新しい体験をすることで、次のような循環が生まれると指摘しています。
1.脳内にドーパミンというホルモンが出る。
2.ドーパミンのおかげでモチベーションと学習の能力が上がる。
3.さらに新しい物事へ意識が向かい、再びより多くのドーパミンが出る。
ドーパミンは、別名「やる気物質」とも呼ばれるホルモンの一種。
新しい刺激で分泌量が増え、幸福感やモチベーション、情報処理能力、集中力などを高める効果があります。
新たなチャレンジが創造性アップに欠かせないのは、わかりやすいでしょう。
幼い頃からものづくりへの好奇心が旺盛だったトーマス・エジソンは、母親にさまざまな薬品がそろう地下室を与えられたことで研究に没頭し、初めて聴いたスティーヴィー・ワンダーのレコードに影響を受けたレディー・ガガは、その後さまざまな音楽に触れたおかげでわずか4歳で楽譜なしでピアノが演奏できるようになったそうです。
新たなことに挑む好奇心がある人は、無意識のうちに新しい情報を積極的に入れることでドーバミンの量が増え、さらにやる気が高まります。
それでは、いまの時点であなたはどれだけの好奇心をもっているのでしょうか?
現状を把握するために、以下の2つの質問に答えてみてください。
・私は新しい経験や複雑な物事に対してオープンである。
・私は形式にこだわるタイプで融通が効かない。
「新しいこと」を日々の暮らしに取り入れていけば、少しずつ好奇心レベルは上がっていきます。
いままで接点がなかった人の話を聞いてみたり、本屋で普段は手に取らないような雑誌を買ってみたり、近所の知らない酒場に入ってみたりと、やれることは無数にあります。
「一日一新」の気持ちで、日々新しいチャレンジに取り組んでみましょう。
↓ 参考書籍
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