【成功者は「朝の十分間」の大切さが身にしみてわかっている!】
「早寝早起きは人に健康と富と知恵を授ける」「早起きな鳥は好餌にありつける」共にアメリカのよく知られたことわざである。
アメリカの大企業のトップ・エグゼクティブが日本に来ると、日本の財界人が驚くことが二つあるといわれている。
一つはその年齢的な若さであり、一つは朝の早いことである。
以前、アメリカの超優良金融機関、シティ・コープの会長ジョン・リードが来日したとき、日本の銀行や証券会社のトップが彼と会うためにアポイントメントをとりつけようとした。
その際、日本のトップたちが驚かされたのは、リードが彼らに朝の六時台の時間なら会えるといってきたことである。
日本人は、すでにアメリカのトップ・エグゼクティブの朝の早いことを聞いてはいたが、「まさに、聞きしにまさるもの」と実感したのである。
人は誰であれ、「義務時間」というものがある。
これは主婦なら洗濯や食事をつくる時間であり、学生なら授業時間であり、ビジネスマソなら会社で仕事をする時間がこれに当たる。
この「義務時間」は、ふつうの社会生活を送る者なら誰にでもあるものなのだ。
この時間にそれぞれが全力を尽くすことは当然のことだが、それ以外の自分の自由になる時間を、われわれはいったいどれくらい有効に使っているのか考えてみたい。
ビジネスマンの場合、残業や接待などがあれば、あとは帰宅して寝るだけということになる。
週休二日といわれても、その一日はゴルフや友人とのつき合い、残りは家族サービスかテレビでゴロ寝というのが、典型的なビジネスマン像かもしれない。
毎日がこの繰り返しでは、いよいよ厳しさを増す現在の企業を取り巻く社会環境にあって、将来行き詰まることは目に見えるようだ。
そういう不安を一度でも感じたことのある人なら、「早起き」を実践していただきたい。
毎朝七時に起きて会社へ行っている人なら、あと一、二時間早く起きることを勧めたい。
そうやって早起きしたために余裕のできた時間を、自分のために使うのである。
ビジネスマンなら近所を散歩したり、読書をしたりするのもよい。
あるいは早く出勤して仕事の勉強をしたり、その日の行動予定を思い描いたりするのもよい。
社内の仲間をつのって会議室で勉強会を開くのもよい。
これは自営業の人も同じである。
こうすることによって、一日二十四時間の使い方に驚くほどメリハリが出てくるのだ。
まして朝のさわやかな一時間は、夜の三時間、四時間にも匹敵するのだ。
朝と夜では時間の「密度」に格段の差がある。
朝は十分単位で大いに生きてくるのだ。
成功者はすべて、朝の「十分間」の大切さがわかっている人だ、といってもよい。
【歴史に名を残した人々は早起きで長寿をまっとうしている】
歴史上、大きな仕事を成し遂げた人々には、早起きで、しかも長寿をまっとうしたという人物が少なくない。
古いところでは孔子七十三歳、孟子八十五歳、栄西七十四歳、親鸞八十九歳、貝原益軒八十四歳、本居宣長七十一歳など優れた思想家や学者には、早起きで長生きの人が多かった。
そしてイマニュエル・カントなども早起きであった。
イマニュエル・カントは、ざっと二百年前のドイツの哲学者である。
いわゆるドイツ観念論哲学を築き上げた人物だが、「哲学といえばカント」というくらいの大哲学者であった。
『純粋理性批判』をはじめとする難解な著書を残し、西洋哲学の歴史に素晴らしい金字塔を打ち立てた。
このカントが、やはり早寝早起きでその偉業を達成した典型的人物の一人である。
カントは謹厳実直な性格の人だったが、それはその日常の生活ぶりにもよく現われていた。
生涯を通してほとんど旅行をすることさえなく、また結婚もせずに思索と著述の日々に明け暮れていた。
その思索と著述活動を支えたのが早寝早起きの生活リズムだった。
カントは遅くとも十一時には就寝し、朝五時にはパッとベッドから飛び起きてコーヒーを一杯飲む。
それから必ず散歩に出かけた。
その散歩が毎日の最初の日課だった。
その時間も毎日きわめて規則的だった。
また、その散歩の道筋も、毎日同じコースだった。
それで、毎日同じ時刻に同じ場所を通ることになる。
それがあまりに正確だったので、街の人々はカントを「歩く人間時計」と呼んだほどである。
カントの住んでいた街には時計塔があったが、街の人たちによると、「時計塔の時計はときどき狂うことがある。しかし、カント先生の散歩の時刻は狂うことがない。時計塔の時計よりもよほど正確に時刻を教えてくれる」というのだった。
こうした早寝早起きの正しい生活リズムを守り、ずば抜けた集中力を身につけて深い思索に入り、歴史に残る偉業を成し遂げたのである。
さて、現代日本の著名人で、早寝早起きで成功した人物を少し挙げてみよう。
たとえば、医学界の権威で文化勲章受賞者でもあった二木謙三先生がいた。
起床は午前三時。三時半から二時間の散歩という生活で享年九十三歳だった。
藤原銀次郎氏。昭和の初期に王子製紙を日本一に育て上げた製紙業界の大立者だったが、この人も毎朝五時起床という生活リズムだった。
起床後には冷水摩擦をし、弓を引くのが日課だった。
享年九十三歳。また世界に冠たる真珠王国を創った御木本幸吉氏も朝五時起床。
そして水浴をして尻をはしより、日本刀で十五分の厳しい心身の鍛練を朝の日課としていた。
享年九十七歳。このように、古今東西を問わず、各界に早寝早起きによる成功者は枚挙にいとまがない。
【「早起き」がなぜ自分を変え人生まで変えるのか】
「人間は希望を持つ動物である」といわれている。
今日よりも明日はよくなろう、いまの自分よりさらに立派な自分になろう、もっと豊かな生活を送りたい、事業をさらに発展させたい……等々である。
そのためわれわれは、日々なんらかの努力をしているはずである。
ところが人生はなかなか自分の思う通りにはならない。
「こんなはずではなかったのだが……」とはにかむことが多い。
何度か努力が空回りしたり、思い通りにいかなくなると、人は「しかたがない」とあきらめてしまいがちである。
「どうせ自分はダメなんだ」というわけだ。
しかし、私はそんな人には、「ちょっと待ってほしい。あきらめるのが早過ぎはしないか」と言いたい。
自分を変えたり思い通りの人生を歩むことはそんなに難しいことではないのだから。
こういうと、人は、「他人ごとだからそんなふうにいうのだろう」「口でいうのは簡単でも、結局、たいへんな努力がいるようなことをいうのだろう」と思われるかもしれない。
しかし、私も凡人の一人だから、何か特別なことをいったり実践してきたりしたわけではない。
まして他人に無責任なことをいうつもりもない。
より優れた自分にしたいという望みをあなたが持ってさらに充実した人生を歩み、自分をいるなら、私は「早起きをしなさい」とアドバイスしたいのである。
「なんだ、そんな程度の話なのか」とガッカリしないでほしい。
これは私の経験を踏まえていうのである。
人生の勝利者の貴重な体験から、また、有名・無名を問わず、本書にこれから登場する「早起き」のすごいパワーを身近に検証してきたのである。
【これが今日一日を最高に生かす先制攻撃法】
だが、「早起き」がいいことは頭ではわかってはいるが、なかなか実行できないという人も少なくないだろう。
とくに最近は、社会全体がルールが夜型傾向が強い傾向を持っているといえよう。
「世間」というものが、なかなか早寝をさせてくれないともいえそうである。
仕事で疲れたから早く帰宅しだからライフスタイものが、早く寝ようと思っても会社の同僚から「一杯やろうよ」と誘われる。
「いい気晴らしになるよ、ストレス解消になるよ」というわけである。
しかし、私はカラオケによるストレス解消も、けっして一概に否定はしないものの、マイナス面も指摘しておきたい。
酒、タバコ、そしてなによりも夜ふかしという「三悪」がつきまとうからだ。
これではけっして理想的なストレス解消にはならず、かえってストレスをためこんでしまうからだ。
それよりも、なるべく早く帰宅して明日に対する余裕を持ち、早寝をすることがなによりストレス解消になるのである。
夜型生活を続けていた人にとっては、朝型への転換はたしかに困難をともなう。
時間と眠気と強い意志が必要である。
ここで一つ早起きのコツを書いておこう。
目が覚めたら寝床の中でけっしてものを考えないということである。
目が覚めたら即座に起きることだ。
それこそ「ガバッ」という感じでフトンをはねのけて飛び起きることである。
これは「今日一日」に対する「先制攻撃」なのである。
まさに「攻撃こそ最大の防御なり」である。
大手住販会社のミサワホームは優良企業として知られているが、そのミサワホームの三澤千代治社長は一日十六時間も働く。
その成功とバイタリティの秘密は、なんと四時半には家を出るという早起き人生にあるのだ。
三澤社長は、「ふつう人間は八時間働き、八時間眠る。問題は残り八時間の使い方だ。そこで他の人との差が生まれる」という意味のことを語っている。
つまり、三澤社長の場合は残りの時間を酒やカラオケに費やさずに、早く帰って早寝早起きに徹する。
それが「他の人との差」を作り出した秘密だというのである。
【なぜ早起きは脳細胞の活性につながるのか】
早起きして、さらに散歩をするなど体を動かすと、頭の働きが断然よくなることは、いま少し述べた私の経験からも、およそ察していただけるだろう。
これは単に私1人の体験ではなく、後にも詳しく紹介するように、現在まで私が主宰する「早起き心身医学研究所)に入って早寝早起きを実践している方々の多くが、学者やトップ・ビジネスマンとして素晴らしい働きをし、成功しているという客観的事実からも納得していただけるのではないかと思う。
これは、単に経験的事実というだけではなく、大脳生理学的な観点からも説明することができる。
なにしろ学校にせよ会社にせよ、その活動はやはり昼間ということになっている。
それなのに夜ふかしをしたり、朝寝坊をしたりと、リズムの狂った人間が学校や会社に適応しようとしても無理をきたすのは当然といえよう。
そして、そうした無理がうつ病や自律神経失調症、あるいはストレスの原因になってくる。
その背景には、昼夜の本来のリズムを逸脱してしまった現代人の悲劇的なライプ・スタイルという事実が存在するのだ。
学校や会社の活動時間帯が昼間を中心にしているのは、人間の体調とも密接につながっているのである。
太陽の運行を中心としたこの生活のリズムをサーカディアン・リズム(体内時計)という。
大昔は時計などといった文明の利器がなかった。
もちろん照明もなかった。
それで人間は、太陽の運行にしたがって行動するようになった。
太陽が昇る時刻に起き出して活動をはじめ、そして太陽が沈めば眠るというような行動パターンが、しだいに作られてきたのだ。
つまり.早寝早起きの生活パターンである。
このリズムは太陽の運行が中心であるから、おのずから朝から翌日の朝(あるいは夜から翌日の夜)までの二十四時間周期となっているのである。
この間に睡眠と覚醒が早寝早起きという形でセットされているのである。
こうして、人間は太陽を中心に生理的メカニズムを調整したのだが、これは人間だけに限られているわけではない。
植物をはじめ、地球上のあらゆる自然体系が、このサーカディアン・リズムを持っているのである。
たとえば、ねむの木が夜になれば葉を閉じるのも一つである。
この周期は二十四時間というサイクルだけではない。
春になれば木々がいっせいに芽を出す、というような四季のサイクルまで、ちゃんと持っているのだ。
こうした長いサイクルのリズムを、人間などの動物に置き換えてみれば、ホルモンの分泌として現われていることがわかる。
たとえば春には性ホルモンが活発になり、ネコが大騒ぎすることも、その一つである。
人間もとりわけ活動的になり、じっくりとものを考えるには不適切な季節ということにもなる。
大脳生理学者が、「沈思黙考するには秋から冬が適している」と主張するのもこういった裏付けがあるからだ。
【体内時計に忠実なのが早起きだ!】
こうしたことからみても、人間はもともと太陽を中心とした大自然の活動のリズムとともに生活するようにできている、ということがわかるのである。
いずれにせよ、人間にとっての生活リズムというのは、個々人が勝手気ままに設定できる性質のものではないということである。
「オレは夜のほうが活動しやすいから、オレのリズムの中心はお月様だ」といっても、それはしょせん本来あるべき健全な生活リズムではないということになるのだ。
このことは、人間の活動力を中心とした生理的メカニズムを観察すれば、いっそうはっきりする。
人間の体の働きはすべて自律神経で調節されている。
頭の働きをはじめとして内臓の活動は人間の意志とはかかわりなく、自動的に働く自律神経で支配されている。
自律神経には心身の活動を活発にさせる交感神経と、逆に活動を鎮静させる副交感神経の二つがあるが、太陽の昇る頃に交感神経が働き出し、そして夜になると副交感神経が働くというメカニズムを持っているのだ。
この自律神経の働きにともなって各種の重要なホルモンも分泌されて、心身の活動力が調整されるのである。
大自然に接したとき、誰もがその超越的なパワーに圧倒されるものだ。
しかし、実は人間自身も本来その大自然のパワーを身につけているのである。
そして早寝早起きという大自然の活動リズムにマッチした生活リズムを身につければ、誰もがその超越的パワーを発抑することができるのである。
【元気の素は午前七時頃に頂点に達する】
生活リズムというのは、人間がそれぞれ勝手な「自分の気分」で決めてしまえる筋合いのものではない。
大自然が持っているルールなのだ。
そのルールが早寝早起きという生活スタイルである。
人間の生活は食物を摂取し、心身の活動をし、そして睡眠を取るというのが基本であるが、その基本のスタートが早寝早起きだといえよう。
寝たいときに寝て、起きたいときに起きるという「気分しだい」の生活では、大自然のルールからはずれていることになる。
そうすれば、心身の機能に異常をきたすのは当然である。
そうしたリズム喪失の生活が、現代人を襲うストレス病、うつ病などの引き金にもなるのである。
裏からいえば、早寝早起きがストレス病やうつ病の治療にもきわめて有効なのである。
私がそうした病気の治療として早寝早起きを提唱し、実践しているのもそのためにほかならない。
では、なぜ早寝早起きが素晴らしいパワー発揮に結びつくのだろうか。
生理学的にいえば、人間を「元気づける」ホルモンとの関係がある。
二十四時間の生活リズムを安定させているのは、副腎の髄質から分泌されるアドレナリンと、副腎皮質から分泌されるコルチコイドというホルモンである。
とくにアドレナリンは人間の「元気の素」とでもいうべきホルモンである。
困難な問題に立ち向かうとき、手ごわい相手に立ち向かうときは、このがホルモンが分泌され、それによって人間は思いもかけない能力を発揮することがでぎる。
この二つのホルモンは、太陽の昇る頃から少しずつ分泌され、午前七時頃にその頂点に達するといわれる。
つまり困難に立ち向かうといったときとは別に、体の中ではその頃にはおのずから生命力がみなぎっているのである。
だから、その時間の二時間くらい前に起きてウォーミング・アップもできあがり、頭も体も持っている能力を十分にれば、十分な心身の発揮する準備は整っているということになる。
↓ 参考書籍
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