この「タイプ」には「この説明」をすれば上手くいく

心理・思考・時間


私たちはみな、それぞれ違った五感を通じて思考している。


といっても、五感のうちどれか一つだけを使うのではなく、いくつかを使い分けているのだが。


たとえば、目の前にセーターがあるとしよう。


ある人は、目で見ることでその質のよさを感じ取る。


またある人は、手で触って確かめる。


自動車なら、車体を見ただけですばらしいと感じる人もいれば、エンジン音で判断する人、あるいは実際に座席に座ってハンドルを握って感触を確かめる人もいる。


つまり、優先的に使う五感が人それぞれに違うのだ。


さて、ここから話はおもしろくなってくる。


注意してよく観察し相手の言葉をしっかり閲いていれば、相手がどの五感を優先的に使うタイプかを見定めることができるのだ。


私たちが使っている五感をおさらいしておこう。


見る=視覚


聞く=聴覚


感じる=触運動覚


嗅ぐ=嗅覚


味わう=味覚




わかりやすく説明しよう。


今あなたがこの文章を読んでいる瞬間にも、さまざまなことが起こっている。


あなたは本の言葉を目で見て(視覚)、時計の針の音や、鳥のさえずりなどを聴き(聴覚)、肌には気温や服の布の感触を感じ(触運動覚)、空気を吸い込むことでその匂いを感じ(嗅覚)、口の中の味を感じている(味覚)。


じつに膨大な情報量だ。


周囲で起きていることのほとんどを、私たちは普段まったく意識していない。


そうした情報は、必要になってから確認できれば十分なのだ。



さて、パートナーと会話をするときに無用な誤解を避けるには、適切な言葉を適切なタイミングで、適切なアクセントと適切な身体言語でもって伝えることが必要となる。


だが、どんな言葉やアクセントや身体言語が「適切」なのだろう?


じつはこれは、人によって違う。


僕たちは誰もが五感を通じてさまざまな体験をしている。


その中でもここでは特に主となる三つのシステム、視覚、聴覚、そして触運動覚にしぼって見ていこう。


注意深く観察すれば、あなたはパートナーが3つのうちどれを重点的に使っているかを、かなり正確に見分けることができる。


たいていは、五感のすべてが同時に使われるが、それでも先ほど述べた通り、人それぞれ優先して使うシステムは違うのだ。


そして、たとえば視覚タイプの人に「よさそうな話に聞こえるね」といった聴覚タイプの人の好む言葉で語りかけても、あまり効果は期待できない。


これはとても大事なポイントだ。


相手がどのシステムを使っているかは、次のような特徴から見分けられる。

【視覚タイプ】



・映像的にものを考える。


・色に関する記憶力がいい。


・服装や身だしなみが整っている。


・他人の服装をよく見ている。


・すばやい動作を好み、胸の高さでの身振りが多い。


・オープンな身振りを多用する。


・胸式呼吸の人が多い。


・考えているとき、目線は上に向ける。


・「見抜く」「見てとる」「描き出す」「目にする」「見る目がない」などの言葉をよく使い、「よさそうに見える」「彼は見る目がない」「それは見逃していた」といった表現をする。


視覚タイプのパートナーに対しては、ただ言葉で語るだけでは効果が薄い。


身体言語を同調させたうえで、あなたの目指すものを実際に「見せる」ようにしよう。


たとえば、キッチンをリフォームしたいとか新しい自動車を買いたいという場合は、パンフレットを見せる。


一緒に観劇がしたいなら、プログラムを見てもらう。


こちらの望むことが、相手の頭の中できちんと映像化されるように工夫しよう。

【触運動覚タイプ】



・感覚でものを考える。


・手ざわりや感覚への意識が強い。たとえば服の着心地や椅子の座り心地、モニターの明るさなどに敏感。


・ゆっくりした動作。


・話すテンポは遅い。


・ゆったりした身振りを、腹の高さで行うことが多い。


・腹式呼吸の人が多い。


・考えているとき、目線は下に向ける。


・「染み入る」「冷たい」「温かい」「鈍感」「ずれる」などの言葉をよく使い、「あれは骨身に染みた」「彼は心が冷たい」「あの人は方向性がずれている」といった表現をする。


触運動覚タイプの人は「しっくりくる」ことを好む。


また、人から触れられるのも好きである。


このタイプには、「いい感じがする」「探りを入れる」「着手する」「大切なものをつかみ取る」のような表現を使うと効果的だろう。

【聴覚タイプ】



・物音や音色でものを考える。


・周囲の物音に気をとられやすい。


・よく聞こえる状態を好む。


・上半身の前での身振りが多い。


・横隔膜を使って呼吸する。


・考えているとき、目線は横に向ける。


・「聞こえる」「聞く耳をもたない」「聞いたこともない」「話す」などの言葉をよく使い、「聞いたこともない話だ」とか「そんな話には耳を貸さない」といった表現をする。


聴覚タイプは相手の話を進んで聞く。


また、心地よい響きを重視する。


このタイプのパートナーをコンサートに誘いたいなら、そのバンドの演奏音源を聴かせるといい(これがもし視覚タイプなら、まずバンドの公式サイトを見せるところだ)。


「僕たちは波長が合っている」、「君にはどう聞こえる?」、「まるで音楽のように耳ざわりがいい」といった言い回しを使うと、より親密な関係を築けるだろう。




この分類は、ずいぶん単純に思えるかもしれない。


だが、けっして軽視しないことだ。


パートナーがどのシステムを優先的に使っているかわかれば、その人の思考に大きく一歩近つける。


相手の言葉の選び方や身振り、呼吸のしかたをよく観察して、自分の行動を相手のそれに合わせていこう。


見た目を似せるだけでなく、言葉づかいも相手の用いているシステムに合わせること。


ただ、どこまで相手に感情移入するかは、あなた次第だ。


ときにはパートナーが拒絶や攻撃といったシグナルを出してくることもあるだろう。


そんなとき、こちらもミラーリングによって同じシグナルを返すべきかどうかは、状況次第だ。


こちらが拒絶のシグナルに同調せず、あくまでリラックスした様子を保っていれば、相手の心もほぐれるかもしれない。


この辺りの判断は、微妙な勘に頼るしかないだろう。


ここで紹介したテクニックを正しく使えば、あなたはパートナーとの間に無意識の、だがときずなても深い絆を築くことができる。


相手は「この人は自分のことを理解してくれている」と感じ、あなたの提案や意見を今よりもっとオープンに受け入れてくれるようになるはずだ。


↓ 参考書籍

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