【自己満足から共感へ】 お金の使い方が変わる瞬間

心理・思考・時間

人はお金を稼げるようになったとき、次に何を求めるかと言えば、幸せになることです。

では、幸福度を上げるために最もいい方法は?というと、心理学的には利他的な使い方がいいとされています。

脳をモニタリングしながら行われた実験によると、100ドルの入った口座から貧しい人たちに一部寄付すると、脳内の尾状核と側坐核が反応したそうです。

この尾状核と側坐核は、報酬系と呼ばれ、喜びを感じたときに活性化する部位で、それも本質的な喜びを感じ取ったとき以外は、反応しません。

ですから、人は他人のためにお金を使うことで、本質的な喜びを感じると言えるのです。

幸福度が増すと、モチベーションが上がり、結果的に「好きなこと」「得意なこと」への取り組む力が湧いてきます。

では、相手に何かを与えるときには、具体的には「誰に」「どんなものを」を与えればいいのでしょうか。

まず「誰に与えるか」という問いに対する答えは、知り合いみんなにです。

他人のためにお金を使うことは、あなた自身に幸福感を与えるだけでなく、「返報性の法則」が働き、まわり周って周囲の人が「あなたにとっての与えてくれる人」になります。

つまり、他人のために使ったお金は投資となり、あなたの「好きなこと」「得意なこと」をマネタイズするチャンスを増やしてくれるのです。

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佐藤さん

これは「お金」にかぎった事ではなく、「仕事面」でも誰かが困っていたら助けてる。そうすることで「返報性の法則」が働き、自身が困ったときに助けてもらえる、まさにこれが「チームワーク」です。

【人は3つのタイプに分かれる】

ペンシルベニア大学の組織心理学者アダム・グラントは、こうした関係性を「GIVE&TAKE」という書籍で、様々な実例をもとに紹介しています。

他人のためにお金を使える人、与える人を「ギバー」と定義して、社会的に最も成功すると指摘しています。

グラントは「ギバー」「テイカー」「マッチャー」の3つのタイプがいると分析しています。

「ギバー」は、相手が何かを求めているかに注意を払い、与えることに注力する人たち。

逆に「テイカー」は、自分の利益を得ることを最優先に考えて行動します。

「マッチャー」は、与えることと、受け取ることのバランスを取ろうとします。

グランドは3つのタイプのうち、仕事面、経済面で大きな成功を手に入れているのは「ギバー」だと指摘しています。

自分の利益を得ることを最優先にしている「テイカー」よりも、結果的には「ギバー」のほうが、より大きな利益を得ているというのです。

なぜ、「ギバー」が成功するのか。

「テイカー」は、周囲から「あの人は策略を巡らして、私たちを出し抜こうとしているのではないか」という疑念を持たれるため、周りからの協力を得ることができず、成功が遠のきます。

一方、「マッチャー」の場合は、人のために使った分は返してもらうと考えるため、常に「本当にこの人は、使った分を返してくれるのだろうか」と計算し、行動が遅くなります。

その結果、チャンスを逃し、常に後手に回ることになるわけです。

それに比べて「ギバー」は、相手に与えることを最優先にしますから、「返報性の法則」において、常に先手を打つことができます。

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また、お金を使うときには、先方が求めているものをきちんと考えたうえで与えますから、相手から深く感謝されます。

その結果、仕事でもプライベートでも、いろいろな人の協力が得られるため、社会的な成功を得やすくなるわけです。

【トップのギバーとボトムのギバーは、ここが違う】

グラントによれば、社会的成功の上位層を占めているのは「ギバー」の人たちですが、一方で最下位超層を占めているのも「ギバー」だというのです。

「ギバー」は「トップのギバー」と「ボトムのギバー」に二極化する傾向があるということ、つまり与える人、他人のためにお金が使える人になれば、それだけ成功できるわけではないのです。

「トップのギバー」と「ボトムのギバー」の違いはどこにあるのでしょう。

それは、「ギバー」として人に何かを与えるときの「与え方の違い」にあります。

「ボトムのギバー」は、自分を犠牲にして他人のために働きます。

そのため、より多くの利益をむさぼり取ろうとする「テイカー」の格好の餌食となってしまいます。

一方、「トップのギバー」は、全体のパイを大きくすることに力を注ぎます。

協力してくれる人たちとともに、知恵を絞り、力を出し合うことによって、それまでは100しかえられなかった利益を200,300へと拡大していく努力をします。

もし、1000の利益を上げることを実現できれば、自分は全体の10%しか取らなかったとしても、100の利益を得ることができます。

そして、拡大した分の利益を協力してくれた人たちに分配することで、誰もが幸せになれます。

つまり、他人のためにお金を使いながら、「好きなこと」「得意なこと」によって稼げるパイを拡大し、配分を大きくしていくわけです。

また、こうした「トップのギバー」は、自分が何か課題を抱えてきて、他者に支援をお願いするときのお願いの仕方も上手です。

「テイカー」や「マッチャー」の場合は、「他人に支援をお願いするのは、借りを作ること」と警戒しますが、「トップのギバー」はそうは考えません。

「君の力を借りたいのだが、一緒に何かできないかな?」と協力を仰ぎ、その課題にみんなで取り組むことによって、より大きな利益を上げる方法を考えようとします。

課題を抱えている状況を、みんなと一緒に何かができるチャンスと捉えるわけです。

だから、より多くの人の協力を得ることができ、実際に成果を手に入れられる可能性も大きくなるのです。

【与える人は相手の才能も引き出す】

他にも「トップのギバー」には、いくつかの特徴があります。

まず「トップのギバー」は「強いつながり」と「弱いつながり」の両方を大切にします。

家族や恋人、親友といった自分と「強いつながり」のある人たちは、自分が苦境に立たされたときなどに、精神面でも実利面でも支えてくれる存在になります。

苦しいときに頼りになったり、うれしいときに心から喜びを分かち合えたりするのは「強いつながり」のある人たちです。

ただし、「強いつながり」のある人たちは、自分と同じような環境で生きています。

そのため、新たなマネタイズのチャンスや「好きなこと」「得意なこと」を爆発的に伸ばすイノベーションに結びつくような、自分が知らない情報をもたらしてくれることは、あまり期待できません。

その点については、「弱いつながり」の人たちとの関係のほうが大切になります。

「トップのギバー」は「弱いつながり」の人たちとも、関係を作り、維持していくのが上手です。

初対面の人の名前や顔を、すぐに覚えるのが得意な人も多いといわれています。

ここから学べることは、「好きなこと」を通じて他人に貢献することでマネタイズのチャンスを増やすためには、「強いつながり」のある人たちだけではなく、「弱いつながり」の人たちに対しても、相手が求めているいるものを広く与えていくこtが大切であるということです。

加えて、「トップのギバー」は相手の中に可能性を見出し、引き出していくのも得意としています。

基本的に優れた先生やコーチは、「トップのギバー」となれる資質を備えているとみていいでしょう。

若くして天才の名をほしいままにしているピアニストも、ピアノを始めたばかりのときから天才だったわけではありません。

「ギバー」の資質を備えた先生が、「この子はこういうところが優れている。きっとこの能力を磨けば光るはずだ」と、早くからその子の可能性を見つけ出し、期待をかけながら育てたゆえに天才ピアニストになれたのです。

先生が子どもに対して「この子は才能がある」と期待すると、実際に子どももその気になって才能を開花させることを「ピグマリオン効果」と言います。

「ギバー」の先生のもとでは、この効果が起きやすく「ギバー」の先生に巡り合えた人はとても幸せだといえます。

相手の中に可能性を見つけ出すのが得意な「ギバー」は、ビジネスでも、まだ株式公開していないような成長途上の企業に投資をしようとします。

その企業に可能性を感じ、自分が支援をすることで花開かせたいと思うからです。

逆に「テイカー」の場合は、既に株式公開をしていて、株価が上昇中の企業に投資します。

サッカーや野球のチームにたとえると、「ギバー」が無名の選手を育てて一流選手にしようとするのに対して、「テイカー」は一流になった選手を、お金を使って取ってこようとするようなイメージでしょうか。

株式公開前の無名企業を育てるのは大変ですが、上場までたどり着けたときには莫大な利益を手にすることができます。

【誰でもできる!簡単に「ギバー」に変わる方法】

「トップのギバー」は一人ひとりの可能性を信じ、より多くの人たちを巻き込みながら、最大限の成果をあげようとします。

チームの中で得をする人と損する人を作らず、Win-Winの状態を作ることを目指します。

「ギバー」は、そのために労力を惜しむようなことはしません。

そのため、みんなが「ギバー」に協力し、また「ギバー」の周りには、「ギバー」の人たちが集まってきます。

ですから、あなたが「好きなこと」「得意なこと」で社会的な成功を手に入れたいのなら、まずは自分が「ギバー」になることを目指すことです。

そして、次に大切なのは、ほかの「ギバー」の人たちと出会い、「ギバー」同士で一緒に仕事をしていくこと。

「テイカー」との間で Win-Win の関係を作ることは困難ですから、一緒に仕事をしようとしている人がどちらなのかを判断できるよう、相手の普段の行動や態度に注意を向けることが必要があります。

「テイカー」が好むのは、富や権力、地位、あるいは自分の利益や勝利といったことです。

一方、「ギバー」が好むのは、人に頼られることや人を助けること、社会やチームのために何をするといったことです。

このように見てみると「ギバー」と「テイカー」では、性格や志向がかなりはっきり分かれていることがわかります。

ここまで読み進めると「うちの課長はギバーだな」とか「同期のあいつはテイカーだろうな」というように、具体的な人の顔が浮かんでいるのではないでしょうか。

佐藤さん

私は「マッチャー」ですね、「ギバー」になろうと頑張ってはいるものの、自分の利益の事をたまにですが考えてしまいます・・・「トップのギバー」になりたい。

ハッキリ見抜くことができたなら、「テイカー」は遠ざけるようにして、なるべく一緒に仕事をしないことです。

では、自分が「トップのギバー」になるためには、どうすればいいのでしょうか。

「ギバー」になれるかどうかは、マインドの問題ではなく、行動の問題です。

「ギバー」の人が行動しているように自分も行動すればいいのです。

「強いつながり」だけではなく「弱いつながり」も大切にして、より多くの人に与える、一人ひとりの可能性を信じ、能力を引き出そうとする、より多くの人を巻き込みながら、最大限の成果をあげ、みんなで喜びを分かち合う、といったことを実践していきましょう。

そしてもちろん、お金を他人のために使うことも「ギバー」となるために欠かせません。

↓ 参考書籍

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