僕(私)たちは口だけでなく身体全体を使い、絶えずコミュニケーションし、思考し、話している。
では、ある感情が生じたとき、その次に現れるのは言葉と動作のどちらが先だろうか?
著者の観察によれば、その順序はどんな人でも共通している。
「感情→動作→言葉」という順序だ。
たとえば非常に腹が立ったとき、あなたの中で何がどんな順番で起こっているかというと、
1,脳が「自分はものすごく怒っている」と気づく。
2,手がバンと机を叩く。
3,「もう我慢できない!」と言葉が出てくる。
あるいは、何かをうっかり忘れていた場合は、こうだ。
1、脳が何かを忘れていたことに気づく。
2,手がパチンと額を打つ。
3、ああ、なんでこう忘れっぼいんだろう!ハーフェナーの本で記憶術を学んだはずなのに・・・。アイロンの電源、ちゃんと切ったかしら」と言葉が出てくる。
この順序は、特に意識しないかぎり、変わることは絶対にない。
そして、さらに重要なことは、「言葉」は嘘をつくということだ。
「動作」には本音が出てしまう。
しかし、そのあとに発する「言葉」は嘘をつける。
つまり、相手の本音を見抜きたければ、「言葉」の前の「動作」を見逃してはいけない。
たとえば街で偶然知人に出会ったとき、本当にその人に会えてうれしければ、反応は次のようになるはずだ。
まず、知人がいることに気づく。
次に、顔に笑みが浮かぶ(動作)。
そのあと初めて相手に歩み寄って、声をかける(言葉)。
もし、相手が自分のところに近づいてきて、「会えてうれしいよ」と言ったあとに笑顔を浮かべるようなら、それは喜んでいるふりということになる。
【あなたがどう思われているのか見抜く5つの方法】
これから書くことは、身体言語の基本となる大切な話なので、しっかり読んでほしい。
次の五つの方法を身につければ、周りの人たちが何を考えているのか、特にあなたをどう思っているかを見抜くことができるようになる。
これから紹介する方法を頭に入れておき、日常生活の中でつねに観察し、実践してほしい。
「表情」から「感情」を見抜く。
表情には、その人の感情がつぶさに表れる。
人間の顔には四十四個もの筋肉があり、それらが組み合わさって動くことで、表情が生まれる。
この非言語コミュニケーション分野の先駆者が、アメリカの心理学者ポール・エクマンだ。
彼は1978年、ウォレス・フリーセンとともにFACS(FacialAction Coding System)という表情分類システムをつくり上げた。
これは顔の表情を記述し分類するためのシステムで、今日では世界中の心理学者が利用している。
エクマンとフリーセンは無数の顔写真をもとにこのシステムを築き上げた。
人間がとりうるあらゆる表情を、顔の筋肉のわずかな動きにいたるまで写真に収め、分析したのだ。
FACSの信頼性は非常に高く、あのピクサー・アニメーション・スタジオ(「トイ・ストーリー」や『ファインディング・ニモ』の制作スタジオ)でもキャラクターの表情づくりにこのシステムを利用している。
エクマンとフリーセンは、表情筋の収縮によって形づくられる七千を超える表情を写真に収めた。
もちろん、その表情すべてに意味を見いだせるわけではない。
だが、目や鼻や口などのよく動く部位には、今そのときの感情が表れるのだ。
さらにエクマンらの発見によれば、基本的な感情を示す表情は、人類の遺伝子に組み込まれている。
というのも、喜びや幸せ、驚き、軽蔑、恐怖、嫌悪、怒り、悲しみを示す表情は、世界のどこでも共通なのだ。
これはつまり、こうした感情は本能的なものなので、意識して考えなくても表に出てしまうということだ。
さあ、友人を誘って、一つゲームをしてみよう。
先ほど挙げた基本的な感情の中から一つを選んで、まずはあなたがその感情を心に呼び起こす。
次に、相手にその感情を当ててもらい、答えを表情で示してもらおう。
やってみるとわかるが、こちらの感情はすぐに相手に伝わり、相手の表情がどの感情を指しているかもすぐにわかる。
さて、僕が特におもしろいと思うのが、エクマンとフリーセンが発見した「微表情(microexpressions)」 だ。
これは1秒の何分の1というほんの短い時間だけの表情変化のことで、その人の隠れた本心が表れる。
一瞬で消えてしまうので見分けるのはとても難しいが、訓練して知覚を研ぎ澄ませば解読できるようになる。
普通の表情と違って、微表情はごまかすことができない。
だから、とても信頼できるシグナルなのだ。
昔、著者の兄はよく僕にマジックを見せてくれた。
そして僕は、しばしば兄が大事なトリックをしかける瞬間を見破ることができた。
なぜなら、その直後にいつもほんの一瞬、兄の口の端がわずかに笑みの形に上がるからだ。
本当に一瞬で、しかもほとんど気づかないほどかすかな動きだったが、そのシグナルは必ず表れた。
もう1つ例を紹介しよう。
ミーティングで同僚に仕事を頼んだとする。
すると同僚は口では「ああ、いいよ」と答えてくれるかもしれない。
だが、そのとき眉がしかめられ、鼻にしわが寄ったら、それは「怒り」のサインだ。
たとえ一瞬でも、その表情はたしかに「とても不快だ」と訴えているのだ。
さらにおもしろいのは、表情が人から人に伝染することである。
あなたがある表情をすれば、相手もまるで鏡のように同じような表情を返してくる。
つまり、顔の表情には、他人の表情を変えるだけの力があるのだ。
たとえばあなたがにっこり笑えば、相手も笑顔になる。
だから日々を笑顔で過ごすことはとても大切だ。
沈んだ顔をしていては、見た目が美しくないばかりか身の回りにも沈んだ顔ばかりを引き寄せてしまう。
信じがたい話かもしれないが、これは本当だ。
↑「笑う」事のメリットをまとめてあります。お時間がありましたら、覗いてみてください。
人は楽しいから笑顔になるだけでなく、笑顔になることで楽しい気分になれるのである。
ところで、エクマンとフリーセンの発見の中でも僕が特に気に入っている事実をお伝えしよう。
とろんとした色っぽい目つきを魅力的だと感じるのは、自分自身がオーガズムに達したときにまったく同じ目つきをしているからだそうだ・・・(笑)。
↓ 参考書籍
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