「徹夜すると脳細胞が死ぬ!」という話を時々聞きますが、これは本当でしょうか?
ラットの5日間の睡眠遮断で、脳下垂体中葉のドーパミン分泌に関連する細胞の数%が細胞死を起こした、という研究があります。
また別の研究では、72時間の睡眠遮断をしたラットでは、海馬で新しいニューロンの産生がほとんど行われなくなりました。
さらに睡眠不足が続くと、ストレスホルモンのコルチゾールが分泌されます。
コルチゾールの高い値が続くと、海馬の神経網飽にダメージを与え、海馬の神経細胞を殺します。
人間での研究ではありませんが、動物実験では、「徹夜が続くと脳細胞が死ぬ」「脳細胞に深刻なダメージを与える」のです。
あなたは、「たった1回の徹夜くらい、どうってことない」と思っていませんか?
それが、「たった1回の徹夜」でも、脳、身体、遺伝子にダメージを与えるという研究が多数報告されています。
【アルッハイマー病のリスク増大】
・たった一晩の徹夜で、Aβ蛋白(アルツハイマー病の原因物質)が脳に蓄積する。
・たった一晩の徹夜で、タウ蛋白(神経毒性の高いタンパク質)レベルが50%も増加する。
【糖尿応肥満のリスク増大】
・たった一晩の徹夜で「時計遺伝子」が損傷し、耐糖能が低下(糖尿病リスクをアップ)する。
・たった一晩の徹夜で、脂肪増加や筋肉量減少が進む。
長期的な睡眠不足が、脳や身体にダメージを与えることは、たった1回の「徹夜」で、アルツハイマー病を進行させるような変化、あるいは肥満や糖尿病を悪化させるような変化、そして「遺伝子ベルでの変化」も起きることがわかりました。
当然、睡眠不足が続くとその影響は大きく、イギリス・サリー大学の研究によると、1週間の睡眠不足により、炎症や免疫機能、ストレス応答などに関係する711個もの遺伝子に影響が出る、といいます。
これはヒトの遺伝子数約2万3000個の3.1%に相当します。
これらの遺伝子レベルでの変化は、数日の十分な睡眠でもとに戻るものなのか、長く後遺症を残すのか。
現在のところわかっていませんが、長期間にわたって影響を及ぼし続ける危険性も指摘されています。
多くの人は「たった1回の徹夜」くらいで、健康を害することはないと思っているでしょうが、睡眠不足によって遺伝子の変化、細胞へのダメージ、Aβ蛋白の蓄積などが確実に起きます。
睡眠不足が、脳に器質的なダメージを与えるのです。
【夜勤は健康に悪い】
医療関係者、警備員、コールセンターなど、交代勤務、夜勤ある仕事に従事している人は多いです。
ある調査では約1,200万人が交代勤務についています。
つまり、日本人の10人にひとりが夜勤をしているのです。
実際、夜勤によって、下痢や食欲不振などの消化管症状、夜勤明けに眠れないなどの睡眠障害、睡眠・覚醒リズムの乱れ、疲れがとれないなど、さまざまな体調不良があらわれます。
長期で夜勤を続けると、性ホルモンが影響を受け、男性では前立腺がんが3.5倍、女性では乳がんのリスクが2.6倍も高まります。
全がんリスクで1.5倍。
脳卒中、心筋梗塞などのリスクは2倍、その他、高血圧、糖尿病、高脂血症など多くの生活習慣病のリスクを高めます。
夜勤を10年以上続けると、がんになるリスクなど、健康へのマイナス効果が一気に高まりますので、仮に今夜勤をしている人でも、長期では続けないようにしたいものです。
夜勤で健康を害さない方法をいくつか紹介します。
(1)体内時計は日勤に合わせる。
夜勤回数が週に1~2回程度の人は、体内時計を日勤の行動パターンからずらさないように行動するといいでしょう。
(2)仮眠を活用する。
夜間勤務中に仮眠が可能、許可されている場合は、仮眠を上手に活用しましょう。
30分以下の仮眠を挟むと、夜間の眠気が解消し、注意力なども改善します。
2時間の仮眠がとれる場合は、睡眠周期は約90分なので、かなりの回復が可能です。
仮眠する場合は、「アイマスク」を使うと、光が遮断され、眠りに入りやすくなります。
(3)日中の光に注意する。
朝日を浴びてしまうと、脳が覚醒して眠気が吹き飛び、帰宅後眠れなくなる、ということも。
サングラスや遮光カーテンなどで、朝日を浴びない工夫をしましょう。
(4)1回1回の睡眠を大切にする。
睡眠の質と量を確保し、疲労回復することが重要です。
夜勤以外の日に、しっかり「運動」することもおすすめです。
日中に強度の強い運動をすることで成長ホルモンが出て、睡眠が深まり、疲労も回復します。
(5)夜勤をやめる。
夜勤手当など、金銭的理由で夜勤を希望している人もいるかもしれませんが、健康へのデメリットを考えると間違いなくマイナスです。
自らすすんで夜勤をするのはやめたほうがいいです。
とはいえ、どうしても夜勤をやめられないという人もいるでしょう。
夜勤は歳を重ねるほど身体への負担も大きくなり、睡眠覚醒リズムヘの順応も難しくなってきます。
夜勤のない業種への転職、あるいは夜勤のない部署への転属など、夜勤を脱出するチャンスを探るべきです。
夜勤する人がいないと、日本の社会が機能しないのも事実。
しかしながら、健康に悪く、長く続けると身体を壊す危険性が高いということを知っておいてください。
私も数年前まで「夜勤」をしていました。トータル17,8年ぐらいですかね。「お金」は手当で多くもらえるのですが、歳を重ねると身体が「しんどい」「イライラする」などの症状が、今思えばありました。ここ3年は日中のみで、早寝、早起き(笑)、身体は「楽」になりました。
【いびきがひどい人は要注意】
「いびきがひどい」といわれたことのある人は、注意してください。
(1)毎日、十分な時間寝ているはずなのに、「日中の眠気」がものすごく強い。
(2)よく「いびき」がひどいといわれる。
(3)「肥満」傾向。
この3つにあてはまる人は、「睡眠時無呼吸症候群」(Sleep Apnea Syndrome、SAS)かもしれません。
SASとは、睡眠中に呼吸が何度も止まる病気。
10秒以上の無呼吸が1時間に5回以上あるとSASが疑われます。
SASの人は、夜中に何十回も強制的に起こされているようなもの。
ですから、日中に「猛烈な眠気」に襲われます。
実際に、SAS患者の交通事故を起こす確率は、そうでない人と比べて7倍といいます。
バス運転手がSASを患っていて、死亡者も出る大事故になったケースもあります。
あなたがSASを持っているとすると、自分が事故死するだけではなく、加害者になる可能性すらありますので、絶対に放置してはいけません。
SASの罹患率は、成人男性の約3~7%、女性の約2~5%といいます。
男性では40~50代が半数以上を占める一方で、女性では閉経後に増加します。
つまり、男性の場合、約20~30人にひとりはSAS。
非常に頻度の高い病気です。
SASの主な症状は、「いびきがひどい」「日中の猛烈な眠気」「運転中に居眠りしそうになる」「起床時の頭痛、だるさ」「夜中に何度も目が覚める」「睡眠中、息が止まる」など。
40~50代男性の肥満の方に多く見られます。
これらのうち、いくつか当てはまるものがあったら、「呼吸器科」を受診したほうがいいでしょう。
SASは、ただ呼吸が止まるだけの病気ではありません。
心臓、脳、血管に多大な負担をかけ、心筋梗塞4倍、脳卒中4倍、糖尿病2~3倍、高血圧2倍と、生活習慣病のリスクを数倍に増やします。
そして、いちばんおそろしいのは、無呼吸による突然死です。
SASの死亡率は、健常者の2.6倍。中等度以上のSASを、無治療で8年放置した場合、4割が突然死するといいます。
SASはきちんと治療することによって、死亡リスクを減らし、「日中の眠気」も改善し、日中の仕事のパフォーマンスを高めることができますので、絶対に放置しないでください。
スマホアプリなんかにも「睡眠測定」系のものはたくさんあります。私も「Sleep Cycle」を使用しています。自分の「睡眠の質」を確認するためです。もちろん、アラーム機能もついていますので、自分の合ったモノを探してみてください。
↓ 参考書籍
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